スポーツドリンク
2014.04.15 23:44 pc(49.98.209.62)
■お名前
水樹
■本文
夏休みの部活が終わり、私は自販機の前で何を買おうか迷っていた。
色とりどりのパッケージ。少し高めだが、部活終わりの疲れを癒すにはこれが一番だ。
私は迷うことなく、お気に入りの飲み物のボタンを人差し指で力強く押した。
すると、がこんという鈍い音と共に、ペットボトルが降りてくる。
少しかがんでそれを手にとれば、夏特有のヒンヤリ感に浸れるのだ。
「あー....気持ち....」
すりすりとペットボトルをさすれば、気持ちの良さが込み上げてくる。飲み物が一番美味しく頂ける季節は夏だ、もう確定。
「あれー、名前ちーん」
「ん、敦」
冷たさを十分堪能した後、私はキャップの部分に手を掛ける。
その時視界に映ったのは、仲の良いクラスメートの敦だった。
「なにそれー」
「ん?スポーツドリンク」
「好きだねーそれ。スポーツドリンクとか言うけど実際は砂糖バンバン使ってんじゃん」
「....敦こそ、部活終わりに苺ミルクとかないわ」
「部活まだ終わってねーし。まだ午後あるし」
「一日練かぁ」
時刻は午後12時ちょい。暑くなってきたくらいの気温で、我らがテニス部も午後からは練習はしない。
しかしバスケ部は室内だ。だから日焼けも何もない。
「蒸し焼きにされちゃうし」
「室内は蒸すからねー」
「うわっスポドリくさ」
「そっちは苺ミルク臭いし」
彼は意外にスキンシップが激しい。今でも顎を私の頭に乗せてくる。重い。
「敦ー、重い」
「名前ちん臭いの我慢してんだからいーじゃん、名前ちんも我慢してよー」
「十分してるっつの!」
気付けば、手の平を刺激していた冷たさも消え、スポーツドリンクはもうぬるくなったことを諭した。
「それ不味くない?」
「私は好きなの」
「ふーん....」
すると、手の平からスカッとペットボトルを奪い取られる。それが一瞬のことだったので、私は一瞬出遅れた。
スポーツドリンクは彼の手中にあった。
「返してよ」
「んーやだ」
「おい」
いくら頑張っても身長の高い敦には敵わないから最初からやらない。
「....あ」
そして、飲み口は彼の唇により占領された。
「なんで飲むの」
「名前ちんこれまだ飲むんでしょー?」
「....」
ゆらゆら、見せつけるようにして中身を揺らしながら私に見せる敦。
「なら最初オレが口付けておけば、名前ちんがこれ飲んだ分だけ関節キスしたことになるじゃん」
「馬鹿野郎が!!」
「いだっ!」
顔がじわじわ、熱くなる。
でもこの熱さは、夏じゃなくて君のせいだ。
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