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ピアノ


綺麗な音色が響いている。
ここ最近、音楽室の前を通ると、必ずと言って良いほどピアノの音が聴こえてくる。
クラシックから、J-POP、K-POPなど趣向は様々である。
昨日はベートーベン、一昨日は某アニメソングだったろうか。
毎日毎日違う曲が聴こえてくるのだ。

ドアは何時も閉まっている。
誰が弾いているのか分からない。

少しばかり疑問に思った私は、扉に手をかけてゆっくりと開けた。
ピアノの音がよく聞こえる。
そのまま、できるだけ音をたてないように中に入る。


「どちら様?」


ピアノの音が止み、女性の声が聴こえた。


「ごめんなさい、邪魔しちゃったかしら…?…って…名前ちゃん…?」
「あ、玲央ちゃん!」


ピアノを弾いていたのは、どうやらクラスメイトのようだった。


「貴女が弾いてたの…」
「そうだよ〜。まだまだ下手くそだけど…」


顔を伏せて楽譜をしまいだした名前ちゃん
もうやめちゃうの?と聞けば、塾だからねぇ〜とふんわりとした笑顔で答えた
今日は部活もないし、彼女のことをもっと知りたくて、途中まで一緒に帰らせてもらうことにした


「ピアノはいつから?」
「んー…保育園のころからやってるから…」
「じゃあ10年くらい?」
「そうだなぁ、そのくらいかも!」


そんなに、長く続くものなのだと思った
私の場合、なかなか熱中するものなんて無かったから羨ましい


「玲央ちゃん、指長いからピアノとかやってみればいいのに。興味あるなら教えるし…?」
「そうねぇ…」


正直弾くことに興味はない
音楽は好きだけれど、自分で作ったりしてみたいとは思わない
どちらかと言えば聞いている方が好きだ
でも…


「名前ちゃんに教えてもらえるなら少しやってみようかしら」
「バスケ部お休みの日とかどう?きっとピアノ好きになるよ!私もそうだし!今じゃピアノがダイスキだもん!」


まるで一筋の光があるかのように微笑んだ彼女
そんな彼女の耳元でこそりと呟く

カァッと赤くなっていく名前ちゃんをみて、更にその気持ちが強くなった







「ピアノも好きだけど、貴女のことの方が好きよ?」

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