「あー寝ーれーなーいー!」
ガバっと夏布団を取って大の字になると、目を開け真っ暗な天井を見上げた。
いつもと変わらない天井。
でも。
足りない。
再び布団を被って無理やり目を閉じると、ドアが開く音がした。
それはやや小さな音で、遠慮がちに開いたようだ。
まさか。
と、智希は勢い良く起き上がりドアを見る。そこには人影が見えた。
「わっ、びっくりした…起きてたのか」
「父さん!」
「しーっ」
有志だ。
音に気を使いながらドアを閉めると、暗闇だというのに慣れた足取りでベッドにやってきた。
「ベッド、いれて?」
「っ……!!」
あまり顔は見えなかったが、小声で聞こえた有志の言葉に智希は発狂しそうになった。
落ち着け。
落ち着け俺。
ふぅ、と深呼吸し、布団を広げ手招きした。
「はい、どうぞ」
「おじゃまします」
落ち着け。
落ち着け俺。
今すぐにでも有志を押し倒しそうになる衝動を必死に抑え、定位置、智希の胸の中に有志が入ってきた。
すっぽりと、まるでその型を取ったかのように智希の胸の中に収まる。
「…将太は?」
「寝たよ。やっぱ子供だね、布団に入ったらすぐ寝た」
父さんの吐息。
父さんの匂い。
なんでこんなに…。
「…あぁ…安心する」
安心する。
そう先に言葉に出したのは有志だった。
ぎゅっと智希に手を回し、胸に顔を埋める。
何度も頬を擦り寄せて、まるで子猫のように甘える父親。
智希も、それに答えぎゅっと抱きしめ返す。