「いっ…痛いっ…やめっ…」
「何がだよ、どんどんでかくなってんだろ」
「っく……うっ…」
「よし、二人とも離れろ」
置田の言葉で簡単に離れた二人は、姫川を置いて教室の端に寄った。
急に刺激がなくなり驚いた姫川がゆっくり目をあけると、カシャっという電子音が聞こえた。
まさか、と姫川が置田を見ると、置田は携帯のカメラで姫川の恥態をおさめていた。
サァーっと、姫川の顔色が青くなっていく。
「なっ…なにっ…なっ」
ガタガタと震え、うまく話せない。
「あーあ、姫ちゃん泣いちゃったー」
長谷部が再び姫川に近づくと、知らない間に流れていた涙を拭き頭を撫でた。
震えながら姫川は長谷部を見上げると、絶望感漂う表情でぽろぽろと涙を零す。
「いっ…今…携帯っ……カメラっ」
「うん、証拠写真撮らせてもらったよー」
子供をあやすように長谷部は姫川の頭を何度も撫でると、笑顔とは裏腹な残酷な言葉を吐き捨てる。
「あの写真、泉水先輩に見られたくなかったらバスケ部辞めてねー」
「っ………」
ひくっと、姫川の喉が鳴る。
「……姫川、返事は?」
置田の低い声が響く。
「わかりましたって言ったら紐ほどいてやるよ」
菅沼が怠そうに喋る。
しかし姫川は頷かなかった。
「……へぇ」
置田が、携帯を机に置き、ゆっくりと姫川の前へ歩いてくる。
怖い、正直本当に怖い。
しかし姫川は頷くことは出来なかった。
智希の為にこの高校に入った。智希とプレーしたい。
智希をもっと見たい。
智希と仲良くなりたい。
バスケがしたい。
「じゃあもっと、恥ずかしいことしてもらうか」
「っ………」
渇いたと思った涙がまた、溢れ出した。
「いきなりは流石にしないから安心しろよ」
「っ………」
震えが止まらない。