第2章
07
「今日ミーティングなんだって」

「え、まじ」

「うん、さっき監督に言われて急だから連絡出来なくて、一年全員呼びに行ってきてくれって頼まれたんだ」

「そうなんだ。じゃあ秋田とかに連絡…」

まだ相手の名前を思い出せないまま、携帯を取りメールを打とうとした瞬間腕を掴まれた。

「あ、いいよ」

「でも…」

「言った言ってないでややこしくなるから、俺が全部言いに行くから」

「そっか」


パタンと携帯をしまいポケットに直すと、相手はニコリと笑い姫川に背中を向けた。


「普通校舎の5階、旧1年10組の教室でやってるから」

「ありが…とう」


あんな誰もこない端っこの教室で?


一瞬そう思ったが、スタスタと歩いていく相手の背中を見つめとりあえず行ってみることにした。

「………」

音を立てながら教室を開けると、そこには二人バスケ部員がいた。
でもこの二人も思い出せ無い。

「あれ、まだ二人だけ?」

「今日は一年だけでミーティングなんだって、今置田が全員呼びに行ってる」

真ん中の席で机に肘をついて怠そうに喋る男が小さく呟くように声を出した。
髪は少し長く、いつも部活中は大きめのヘアーバンドをしている奴だ。
もう一人はその男の前の席に座り、ニヤニヤしながら姫川を見るとすぐに携帯で何かを打ち始めたようだ。
スポーツマンらしく短髪だが、正直感じが悪い。

そういえば置田、あぁさっき声をかけてきた奴か。そんな名前だったな。

そう思いながらドアの所で立ちすくんでいると、突然背中を押され姫川は教室に無理矢理押し込まれた。

バランスを崩しそうになったが膝をつく寸前で足を前に出し踏ん張る。
反射神経は良い方だ。

「いって…!何すんだよ!」

勢い良く振り返ると、置田だった。

「よし、始めるか」

「えっ?」

ピシャンと扉が閉まる音が聞こえると、姫川の腹部に何かが当たった。
その直後、息が出来なくなり眩暈がする。

「お、流石。殴られても倒れはしないんだな」

ケラケラ笑う声が段々薄くなっていくと、置田に腹を拳で殴られたとやっと気付く。

姫川はお腹を抱え持っていた鞄を全て床に落としふらつくと、いつの間にか近くに来ていた二人に両腕を掴まれ捕らえられた状態になる。

まだ話すことが出来ない姫川は、瞬きをしながら自分より20センチ程高い置田を見た。

笑っている。
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