「…今何時…」
「9時だよ。早く起きて。もうご飯出来てるから」
「…んー……ん?」
「?」
確実に有志の声のトーンが変わった。
半音高くまるで驚いているようだ。
「どうしたの?」
「…なんで俺、ここで寝てんの」
「えっ」
智希の部屋の布団を握りながら真剣にそう言うと、頭をポリポリかきながら起き上がった。
「…あれ…ここ…智の部屋?」
「……うん」
まさか。
動悸が激しくなる。
「なんで俺自分の部屋で寝てないの?昨日なんかあった?」
「…………」
まさか、まさか。
と、脳内で昨日の出来事がフラッシュバックされている。
まさか。
「昨日のこと…覚えてない?」
「…え…俺…なんか…した?」
「…………」
震えているだろうか。
それさえもわからない。
「うわーなに…こんなん初めてだー」
起き上がった有志はすぐにまたベッドに倒れた。
頭を抱えゴロンゴロンと悶えている。
「…どこまで…覚えてる?」
「……気分良くなってー…。あ、タクシーに乗せられたのは覚えてる」
はっとして再びベッドから起き上がると、あぐらをかきながらうーんと唸っている。
智希は、今にも泣きそうだ。
「そっからは?」
「………わかんない」
「家に帰ってきてからは?」
「……………わかんない」
「……………」
有志の腕を掴みきつく揺らすと、辛そうにわからないと答えるその顔に自分までもさらに辛くなる。
まさか。
「え、でも俺着替えてる…。凄い記憶ないけどちゃんと着替えたんだー」
「………………」
「うわー記憶飛んだのとか初めてー」
「…………なんで…そんな自棄酒したのかも…覚えてない?」
「…………理由、あんの?」
逆に、聞かないでよ。
胸が痛すぎて破裂しそうだ。