第1章
78



ぐぅっとお腹がなるのは流石高校生。
しかも昨日の晩あんなに激しい有酸素運動をしたもんだから、腹の虫が地響きを立てている。

眠る有志の頭を撫で名残惜しそうに額にキスをすると、部屋を出てリビングへ向かった。

有志が起きてくるまでに朝ごはんを作ってあげよう。
きっと、有志もお腹を空かせているに違いない。

いつも一緒に食べている朝ごはんだけど今日は特別だ。
きっと照れて目が合わないだろう。
でも、なんていうか…。

今、自分は世界一幸せ者だと思う。

思わず鼻歌も歌ってしまう。

台所へ立ちご飯を炊く。
その間にいつものお味噌汁と玉子焼きを作り、ソーセージを炒め、最後にサラダを作る。

うん、相変わらず上出来だ。
味噌汁の味を確かめ終えると、リビングにある大きな時計を見た。
もう9時だ。そろそろ有志も起きるだろう。

「…起こしに…行くか」

まるで新婚の嫁になった気分で火を止め箸を置くと、少々照れるけれど再び自分の部屋へ上がる。



中に入りまだ寝息を立てている有志にクスリと笑うと、眠るすぐ隣に腰を落とし頭を撫でた。

「…おはよう、父さん。朝だよ、ご飯できてるから」

「………」

起きない。

「父さん。朝だよ。朝ご飯あるから」

「…っ…んー…っ」

少し不機嫌そうながらも反応を見せ寝返りを打った。
体を丸めさらに小さくなっている。

「父さーん。おきてー」

「んー…んー…」

ユサユサと体を揺らすと、今度ははっきりと意識のある唸り声が聞こえた。
段々楽しくなりまた強く揺らすと、重たいその瞳をゆっくり開けキョロキョロと目を動かした。

「…ん…智…?」

「うん、おはよう…」

「……起こしてくれたの」

「…うん」

いつもより少し低くだるそうな声と態度がまた可愛い。
思わず抱きしめたくなったけどそれはまだ我慢と自分に言い聞かせる。

きちんと起きて、そして目が合ったら、キスをしよう。
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