第1章
57
モテないわけではないので、今まで女の子と付き合ったことは何回もあるが、正直智希は少々女の子が苦手だった。
特に自分から話題を振るわけでもなく淡々と答えていると、普通なら愛想のない男と思われがちだが、ルックスが良いため逆にそれが大人っぽくてかっこいいと思われる。

実際、まりなちゃんも智希をさらに好きになっているようだ。



食事を終え会計を済まし全員外に出た。

「じゃあ、また」

「うん、また遊ぼうねー」

石川さんがニコっと笑い男性人に手を振った。
藤屋が大きく手を振って答えると、石川さんがケラケラ笑いながら答えている。
犬とご主人様みたいだ。

「そういやまりなちゃんとメアド交換したの」

「いや」

「え、してねぇの?」

勿体無いと男二人から驚かれ少し不機嫌になると、俺にあーいう子は勿体ないよと言いながら歩き出す。

「まあ確かに智相手にしちゃちょっと純粋そうだなー」

「だな」

男3人で駅まで歩くと、電車組の真藤、藤屋、このまま徒歩の智希で分かれる。

「じゃあな、また月曜日」

「おお、飯誘ってくれてありがとな」

「おー」

「じゃあな泉水!女の子関係の話ならいつでも乗るから!」

「はいはい」



改札で二人と別れると、酔っ払いや会社帰りのサラリーマンが多い路地をゆっくり歩き出す。
ポケットに手を突っ込んで空を見上げると、星が見えない。
やっとのことで見つけた一番明るい星を見つめ大きく溜息をつく。


月曜日、もう一度佐倉に謝ろう。
そしてこういう関係はやっぱりやめようと言おう。

絶対好きになれないのに、後輩と体の関係だけなんて無理だ。
そんなに器用じゃない。

今日何度目かわからない溜息を再びつくと、家の前にタクシーが止まっているのが見えた。
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