「そうか」
「ごめんな、心配かけて」
「いや、大丈夫」
真藤は少し納得いかないような顔をしていたが、すぐに煩い藤屋がその場の空気を洗い流してくれる。
ある意味、ありがたい。
程なくして女の子3人が現れた。
真藤の中学時代の同級生らしく、みんな普通に可愛い。
その中でも短めのボブに白いスカートと黒のジャケットを着ている柔らかい感じの女の子が、智希を見るなり頬を染めている。
この子が智希狙いか。
全員が感づいた。
当の本人智希もなんとなく気づき、でも気づかない振りをして話しかける。
するとその女の子はすぐ目を反らし智希の質問に対して簡単に答えると、すぐ離れていってしまった。
正直、可愛い。
藤屋が羨ましそうに智希を見ている。
でも、智希はもちろん、嬉しくないわけで。
近くのレストランチェーン店に入り食事を始めると、同年代ということもあって話は盛り上がった。
その智希のことが好きな女の子は『まりな』ちゃんと言うらしい。
少し恥ずかしがり屋なのかあまり口数は少ないけれど、みんなの話を一生懸命聞いている姿勢がとても可愛く健気だ。
「まりなちゃんって、どこで泉水のこと知ったの」
「えっ」
「………」
「………」
空気の読めない藤屋は簡単にこんな質問をする。
まりなちゃんはさらに顔を真っ赤にすると、チラリと智希を見つめ目が合いまたすぐ反らした。
「………その、私もバスケしてて…」
「あぁ、だから好きになったんだ」
「……っ」
「っ…痛っ!!」
隣に座る真藤が藤屋のスネを靴の裏で蹴った。
もちろん、テーブルで隠れていて他のメンバーは見れないためなにが起きたのかとびっくりしている。
智希はだいたい予想がついたので呆れた顔をしながら運ばれてきたパスタを口に含んでいた。
「藤屋君って、デリカシーないよね」
「そうだね」
ケラケラと笑う女の子二人の隣で、まりなちゃんは顔を真っ赤にして何度もチラチラと智希を見ていた。
智希は、食べているだけ。
「藤屋呼んだの間違いだった。ごめんな、石川」
「いいよ、おもしろいし」
石川と呼ばれた女の子は、この食事会を主催したであろう人物だった。
少しサバサバしていて、長い黒髪が印象的な美人だ。
「なんで!俺盛り上げてるのに!」
「盛り上げ方を間違ってる」
真藤と藤屋の絡みに全員が笑っている。
まりなちゃんも、少し顔の赤みは引き一緒に笑っていた。
智希は、ひたすらご飯を食べている。