第1章
55




『好きです』

「………」


それだけ書かれていた。



時間になり待ち合わせの場所へ行くと、真藤と藤屋がいた。
案の定怒られたが女の子はまだ来ていないらしい。

「なんだ、藤屋もいたの」

「いちゃダメかよ。俺はお前と違ってモテないからこういうことは積極的に参加しないとダメなの」

普段制服姿に慣れているため、藤屋の私服は少し新鮮だ。
色のあせたお洒落なデニムに薄手の白い長袖を着ていて、流石スポーツをしているだけあってシルエットは綺麗だ。
でも発言は相変わらず、バカだ。

「藤屋はがっつきすぎなんだよ」

真藤が苦笑いしながら藤屋の隣に立つと、短髪を少し立たせて若干お洒落をしているようだ。
こいつも本気か、そう思いながら本日の主役は逆にやる気のない顔。
藤屋は相変わらずテンション高めに騒いでいるが、智希のそのテンションの低さに真藤は気づくわけで。

「どうした智、なんか元気ないな」

「そうなの?」

駅の近く、夕方ということもあって人通りはかなり多い。
店の前で腕を組み女の子を待つ3人の男子達は、正直かっこいい。
3人とも特待生のため、まだ高校生だが体もしっかりしていてスタイルがいい。
その3人の中でも一番背が高く目立つ智希は、やや落ち込み気味だった。

心配する二人をチラリと見て(藤屋は正直あまり心配していないようだが)苦笑いをした。

今、自分は自己嫌悪に陥っている。
もちろん、言わないけど。

なぜ佐倉としてしまったのか。
やはり、やるべきじゃなかった。
あいつは遊びでもいいと言ったけど、これは重過ぎる。
あいつの想いは、深すぎる。

なんて軽率な行動をしたのだと落ち込み、溜息が増えた。

「風邪か?」

「いや、その………」

濁す。

「そこまで無理しなくていいから、辛かったら帰っていいぞ」

「えーでも泉水いなかったら意味ないんじゃ…」

「うるさい」

「はい」

振り返り藤屋を一喝すると、再び智希へ向きなおし少し心配そうに顔を覗き込んだ。

「いや、大丈夫。ちょっと合コン久しぶりだから緊張してるだけ」

「………」

「まじか!俺もめちゃ緊張してる!」

正直、藤屋は煩い。
でもこの明るさは真似が出来ないから羨ましいとも思う。
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