「ん?」
もう少し目を凝らして見て見ると、佐倉だった。
「っ…ほっ」
もう何時間もここで練習をしているのだろう、汗だくだ。
シュートを打ってはボールを取り、またシュートを打つの繰り返し。
いつ終わるかわからないその表情は少しゾクっとした。
「………」
思わず、フェンスの扉を開けて入ってしまった。
イヤホンを取ってゆっくり中に入っていくと、気づいたのか佐倉が警戒しすぐ後ろを振り返った。
「っ…はぁ…はぁ……え、泉水さん??」
「あ、やっぱり佐倉か」
佐倉は本当に驚いた様子で持っていたボールを思わず落としてしまった。
ポンポンと跳ねながら智希の方へ向かっていく。
「お前んち、近所なの」
「あっ…いえ………秋田に…この辺でバスケできるところ聞いて…チャリで…」
「秋田?あぁ、特待の奴か」
「あいつはこの辺近所らしく…」
「へぇ」
なぜか佐倉は緊張していた。
いつものような余裕さはない。不思議だ。
「?なに、なんでそんな驚いてんの」
「いや、まさか休日も会えるって思ってなかったんで……」
「嬉しい?」
「はい」
「……………」
こっちが照れるっての。
言われた本人ではなく、おちょくろうとした本人が顔を真っ赤にした。
佐倉のボールを取り自分のボールと重ねて器用に持つと、照れ隠しのように近づいてボールを返した。
「……どうも」
「お前、どのぐらいここにいんの?汗びっしょりじゃん」
「……今何時すか」
「………17時30分過ぎ」
「じゃあ…3時間ですね」
「そんな?!」
「はい」
呆れた。
そう顔で言うと、佐倉はクスっと笑い汗を袖で拭きながら返されたボールを手にして走り出した。