「なに」
『今暇か?』
「それほど暇ではない」
嘘だ。
暇すぎて近くの公園にバスケでもしに行こうか考えていたぐらい暇だ。
『そうなんだ。時間あるならさ、飯行こうかなーって思って』
「行く」
『暇じゃないんだろ』
再びケラケラ笑う声が聞こえた。
真藤もわかっているのだろう。それほど智希は忙しくないと。
「ご飯なら行く」
『いいのか、親父さん』
「今日は飲みに行った」
あぁ、だからか。とまた笑い声。
なんとなしにつけたテレビを消し立ち上がると、リビングを去り部屋へと向かう。
「それにしてもどうしたんだ、いきなり」
『いや、実はさ』
「…………」
この沈黙は、経験がある。
「……合コンか」
『正解!なんかお前のこと気に入ってる女の子がいるみたいで、3対3で飯行かね?って』
「真藤の奢りな」
『なんでだよっ』
部屋に入り扉を閉めると、ベットに崩れ落ち時計を見た。
「何時から」
『18時。どうする、行くか?』
「晩飯食いに行く」
『おっけ』
クスクスと優しい笑い声が聞こえなんだかその声に安堵すると、思わず寝てしまいそうだったので起き上がり音楽をつけた。
「どこで待ち合わせ」
『いつもの西口駅のミスド前』
「オッケー、んじゃあとで」
『おー』
ピっと音を立てて携帯を切ると、もう一度ベットに崩れ落ち目を閉じた。
合コンか。
つい先日だったら喜んで行ったのに、なんだか気が気じゃない。
佐倉だ。
あいつ、俺に彼女が出来たらどうするんだろう。
やっぱり、物分りの良い言葉を言うのだろうか。
それにしても自分は悪魔だな。
人の気持ちに付け込んで、と自己嫌悪する。