第1章
48


「あいつ、なんかうぜぇな」

「泉水さんに軽々しく話しかけんなっての」

体育館の隙間から先ほどの一部始終を見ていた(実際には姫川の大きな声しか聞こえなかったが)置田、菅沼、長谷部だ。

3人もまた、智希に憧れ普通科で入ってきた一年生だ。

「ちょっと、やっちゃいますか」

「制裁制裁」

「やっぱスポーツマンだし、縦社会わかってねーとな」

ニヤリと笑うその影に、スポーツマンらしさなんて微塵もない。
3人はまだ智希のいた所を見ている姫川を睨みつけると、更衣室へ戻っていった。



「……………ふーん。くだらね」

その、さらに3人を見ていた。
佐倉だ。

大きく溜息を付きながら更衣室へ向かった3人から目を反らすと、やっと戻ってきた姫川を見つめる。

「……姫川…お前も…」

それ以上は声が出ず、佐倉も体育館を後にした。



「忘れもんない?」

「うん。じゃあ行って来る。なるべく日付が変わる前に帰って来るよ」

「いってらっしゃい」

「いってきます」

土曜日の夕方、有志は呼ばれていた結婚式の2次会へ行った。
見送り家の鍵を閉めると小さく溜息をつきながらリビングへ向かう。

昼ごはんは一緒に食べたものの、折角部活も有志の仕事もないっていうのに夜は一人だと思うと少し憂鬱だ。
時計を見れば17時を回ったところで、何かおもしろい番組はないかテレビをつけたものの夕方の土曜日は正直、おもしろくない。

「そういえば晩飯どうすっかなー」

ソファにもたれて天井を見ながら呟くと、まるで盗聴でもされていたのかと思うほどタイミングよく携帯が鳴った。
体を乗り出してディスプレイを見ると、どうもメールではないらしい。

「電話か」


透明なテーブルの上に無造作に置いていた携帯を取り着信者を見ると、そのまま通話ボタンを押して再びソファにもたれた。

「よぉ、どうした」

『すげぇ、携帯ちゃんと持ってたんだ』

ケラケラと笑い声が少し篭って聞こえる。
電話をかけてきたのは、クラスで一番仲の良い真藤だ。
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