第1章
47

「お帰りですか?」

「あっ、あぁ」

やっぱり声はでかい。

「あ、あの、あの」

「ん」

「おおお疲れ様でした!」

「ぷっ」

「??」

あはは、と声を出して笑うと、何故そんなに笑っているのかわからない姫川の頭からハテナマークがたくさん飛び出ている。

「お前、それ言うためだけで走ってきたの」

「はっはい。先輩を見つけたんでっ」

「タオル握りしめて?」

「はいっ」

なんとも可愛らしい。
清野がからかうから少しビビっていたが、ただの可愛い後輩だと思えばなんともない。

それに、ここまで慕ってくれるのは嫌じゃない。

「今日姫川凄かったらしいな」

「へっ」

「20周レース。30人以上の中で6位だろ。特待の奴も抜かしたみたいだし」

「えっとあっえっあのっ」

まさか褒められると思っていなかったのだろう。
暗闇でもわかるぐらい姫川の頬は火照っていて、タオルがどんどんグシャグシャになっていく。

「体力があるのはいいことだよ。技術なんかいつでもいくらでも身に付く。頑張れな」

「はいっ!!」

「……お疲れ」

「っしたっ!!!」

深く深く90度体を曲げて礼をすると、ブンっと音がなり風が吹き起こった。

くっくっくっ…おもしろい奴。

嬉しそうに笑いながらその場を後にすると、姫川はその智希の後ろ姿を見えなくなるまでずっと見ていた。

泉水先輩………

もはや、目はハート型である。



そんな穏やかな空気の中、危険因子が潜んでいた。
[48/171]
←BACKNEXT→
しおりを挟む
novel





























人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -