第1章
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「え、結構早くね?」

「泉水のタイム越したか?」

「いや、残念だがあの超人タイムは越せてねぇよ」

「でも誰だ?これなら歴代3位確定なタイムなんじゃね?」

ざわざわと響く講堂の中に一番乗りで入ってきたのは。



「……戻りました」

佐倉だった。



「やっぱ佐倉ってすげぇんだな」

「2位の秋田と3分以上離れてたし」

「なんか周回遅れ何人もいたらしいぜ」

「すげー」

「去年の泉水を思い出すな」

「俺っすか」

更衣室で部活を終えた上級生が着替えながら今日の20周レースについて話していた。
1年生は例により体育館の掃除中だが、専ら話題は佐倉だ。

「でもやっぱお前の超人タイムには追いつかなかったな」

「当たり前っす、簡単に抜かしませんよ」

「でも歴代3位だって。すげぇなー」

智希はふと、思った。

もしかしたら今日俺の飲んでなかったらもっといけたかも?

なんだか少し、罪悪感だ。

「姫川ってのも凄いんだな」

「ぶっ」

「ん?どした智希」

「別に」

姫川の話が聞こえただけで反応してお茶を噴出してしまった。
乙女のように智希を見つめる姫川には困っている。

実際は、それを見てからかってくる清野に、だが。

「あんまパっとしない奴だなーって思ってだけど、6位だろ」

「俺今日初めてあいつ知った」

「ひでー自己紹介の時あいついたのにー」

ゲラゲラと笑う更衣室の中で智希は携帯を開き有志からのメールが着ていないことを確認すると、大きなスポーツバックを背負い先輩に一例した。
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