「誰っ誰っ誰っ」
「ちょっ…先輩重っ……やめてくださいっ!」
「教えたら退いてやる」
「だから別に誰にもっ……」
「泉水さん」
「っ…………」
「おぉ、佐倉。どうした?」
ふざけている二人に声をかけたのは、佐倉だった。
なんだか佐倉の顔を見ることが出来ず床を見つめていると、変わりに清野が代弁してくれる。
「監督が一番最初に帰ってきた1年のシュート練習見てやれって」
「……泉水が?」
「俺が?」
ほぼ同時に聞き返すと、佐倉はもうグラウンドにでかける寸前だったらしく、タオルを首に巻いていた。
清野に押し倒されながらも顔だけを動かし見上げると、今日の昼あんなに喘いでいた佐倉ではなく高校一年生にしてはクールな顔があった。
やべ、思い出したら勃ちそう。
思わず目を反らしてしまい気まずくなると、佐倉はフっと笑い音を鳴らして出口へと歩き出した。
「泉水さん、俺絶対一番で戻ってきますから」
「おっ…おお……、頑張って」
「はい」
情けない格好の相手に微笑むと、小走りで出口へ向かいそのままグラウンドへ走っていった。
「お前、ほんとモテんのな」
「男にモテても」
「だよな」
ゲラゲラ笑っていると、顧問の怒鳴り声が響き、清野だけが怒られた。