第1章
42

「誰っ誰っ誰っ」

「ちょっ…先輩重っ……やめてくださいっ!」

「教えたら退いてやる」

「だから別に誰にもっ……」


「泉水さん」


「っ…………」

「おぉ、佐倉。どうした?」


ふざけている二人に声をかけたのは、佐倉だった。
なんだか佐倉の顔を見ることが出来ず床を見つめていると、変わりに清野が代弁してくれる。

「監督が一番最初に帰ってきた1年のシュート練習見てやれって」

「……泉水が?」
「俺が?」

ほぼ同時に聞き返すと、佐倉はもうグラウンドにでかける寸前だったらしく、タオルを首に巻いていた。
清野に押し倒されながらも顔だけを動かし見上げると、今日の昼あんなに喘いでいた佐倉ではなく高校一年生にしてはクールな顔があった。

やべ、思い出したら勃ちそう。

思わず目を反らしてしまい気まずくなると、佐倉はフっと笑い音を鳴らして出口へと歩き出した。

「泉水さん、俺絶対一番で戻ってきますから」

「おっ…おお……、頑張って」

「はい」

情けない格好の相手に微笑むと、小走りで出口へ向かいそのままグラウンドへ走っていった。

「お前、ほんとモテんのな」

「男にモテても」

「だよな」

ゲラゲラ笑っていると、顧問の怒鳴り声が響き、清野だけが怒られた。
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