「はい、タオル」
「サンキュ」
佐倉がモソモソと起き上がりどこからともなくタオルを取ってきた。
準備万端だったんだな。
教室の奥にある水道で手を洗いタオルで拭いていると、佐倉は涼しそうな顔をしてやってきた。
「タオル、俺も貸してください」
「ん」
佐倉は下を何もはいておらずシャツ1枚だ。
正直、めちゃめちゃエロい。
「その、悪かったな」
「何がですか」
蛇口から流れる水の音が響く。
「いや、その……口の中に」
「別に。俺がしてほしかったんで」
智希を見つめると、ニコっと微笑み触れるだけのキスをした。
「それと…その、お前を身代わりに」
「それは同意の上だから、気にしないでください」
今度は機嫌を損ねたのか口をへの字に曲げそっぽを向いてしまった。
まだ、蛇口から水の音が聞こえる。
気まずい沈黙を救ってくれたのは、チャイムだった。
「あ、昼飯の時間だ」
「そんな時間になるまでここにいたんですね」
「……その、気分悪くねぇ?やばかったら部活休んでも」
「キャプテンになんて言ったらいいですか。泉水の精子飲んで気分悪いんで休むって?」
「…………」
意地悪に笑う。
ちょっと、仕返しだろうか。
「俺は大丈夫ですよ。女じゃないし」
「でもっ」
「その代わり」
佐倉は蛇口を閉め水を止めると、タオルで手を拭きながら智希に詰め寄った。
「その代わり、次は抱いてくださいね」
「…………」
何も、答えることは出来ない。
黙る智希を少し辛そうに見ながら笑うと、脱ぎ捨てた下着とズボンを身に付け少し埃っぽくなったジャケットを手で掃いながら着た。