淡々と話すその言葉がなんだかとても冷たく聞こえて、暖房も何もないこの部屋がさらにヒンヤリ感じる。
気が付けばチャイムが鳴っていた。
でも二人はその場を動こうとしない。
「お互い、一方通行だね」
「佐倉、本当にいいのか」
「いいよ。泉水さんに会うためだけにこの高校に入った」
正直迷っている。
本当にいいのだろうか。
この選択肢に間違いはないだろうか。
セフレがいる友達は確かにいる。
そこまでして性欲処理をしようと思っていなかった。
しかし思いの外妖艶すぎる佐倉に少し毒されたのかもしれない。
いい方が悪い、か。
魔法をかけられた、そんな感じだ。
佐倉の所為にしてる時点で最低だけど。
「俺、男は初めてなんだけど」
「俺もですよ、まぁまずはライトに、ね」
ライトってなんだ。そんな軽くていいのか。
ぐるぐると考えるが性欲と好奇心には勝てないらしい。
智希はネクタイを緩めた。
グラウンドから離れているのもあると思うが、音は全く無い。
聞こえるのは二人の熱い吐息と唾液の交じり合う粘着音だけ。
そのため、興奮度ももちろんアップするわけで。
「……はっ…っ……泉水さんキスうまっ…い」
「……どうも」
智希は数週間ぶりのキスにやや興奮気味で迫ると、負けず劣らずのキスを返してくる相手に少しむきになりながら何度も角度を変え唇を貪った。
鼻で息をしながらお互いの唾液を交換しゴクリを飲み込む。
佐倉は飲み込みきれなかった唾液を頬に流しながらうっとりと見上げた。
興奮する。
あんなに憧れていた、憧れから深い感情へ堕ちていったあの人が今、自分とキスをしている。
自分とのキスで下半身を高ぶらせている。
それだけで、再び佐倉の下半身は高揚した。
お互いのジャケットを脱ぎ床に敷くと、智希はゆっくり佐倉の背中に手を回し寝かせる。
緩めた自分のネクタイを外し机の上に置き、佐倉のシャツの中に手を入れた。
「……真っ平らだな」
「…胸大きい子が好きなの?」
「別に。胸はでかさより形派」
「あはは。でもごめんね、俺全く無いや」
「だな」
でも父さんにも無いしな。
むしろ運動とか全くしてないから佐倉より胸板薄っぺらいし。
有志のことを考えながらシャツの中の手を動かすと、小さな突起に触れ思わず条件反射でグっと押した。
「っ……」
「あ、悪い。痛かったか?」
佐倉は眉を顰め下唇を噛むと息を飲み込み甘い吐息を出した。