「でも智ほんと凄いよな。バスケは中学に入ってから始めたのに今じゃ全国プレーヤーだもんな」
自慢げに喉を鳴らすと、まるで自分のことのように陽気になり箸を遊ばせた。
ゴクンと味噌汁を飲み終えた有志は、台所へ行きお茶のお代わりを自分と智希にそそぐ。
モグモグよく噛みながら智希はありがとうと言うと、有志はまた向かいに座り嬉しそうに目尻を下げた。
「自慢の息子だ」
「………」
ピタリと、智希の手がとまる。
「?」
「頑張るよ、バスケ。今年こそまじ初戦敗退はしない」
「ん」
有志は本当に嬉しそうで、智希の気持ちなんか微塵も気付かずニコニコ笑う。
自慢の息子、ね。
自慢になんかできないし、こっちは息子だと思ってないんだけどな。
チクリと、胸が痛い。
いっそひどい痛みだといいのに、その痛みは微弱だから心地悪い。
「あ、そうだ智」
「ん」
二人とも食事を終え、有志は洗い物をしていた。
リビングのソファで今日出された課題をやっていた智希は、集中していたため振り向かずノートを見つめたまま返事をする。
「今週の土曜な、部下の結婚式なんだ。式や披露宴には行かないけど二次会には呼ばれてるからちょっと行ってくる」
「泊まり?」
「まさか。でも次の日日曜だから遅くなるかも」
「ふぅん」
集中の糸は完全に切れ、上半身を台所に向けながら口を尖らせた。
落ち着いているほうだとは思うがまだまだ子供。
折角の週末を他人の結婚式なんかに邪魔される。と、低レベルな考えをしてしまう。
「あんま飲むなよ、弱い癖にのせられたらベロンベロンになるまで飲むんだから」
「……はい」
過去何度か失敗をしたのだろう。
有志は肩を下げすみませんと言わんばかりに声を出した。
「だから晩御飯…」
「あーうん。適当に友達と食べてくるよ」
「じゃあお金…」
「いらない。お土産なんか買ってきて」
「はいよ」