「……」
「……」
今度は、一気に静まり返る。
やりずれぇ。
そう思っていると、期待の新人佐倉が声をかけてきた。
「…ども」
「どうも初めまして。凄いんだってな」
「………正直、昨年の先輩達の試合、鳥肌立ちました」
「そりゃどうも」
ピっと笛がなり、始まりの合図が体育館に響く。
「智ー、うちのルーキーだって証明してこーい」
「はーい」
先輩にきつめのボールを渡され、しっかり胸で受け取ると上体を一気に浮かせ、下げ、フェイントを決め軽く佐倉を抜いてゴールを決めた。
「っ……」
「すげー!」
「はえー!!」
「かっけー!」
一瞬何が起こったのか、佐倉にはわからなかった。
さっきまで自分の目の前にいて、へらへらした顔で返事をしていたというのに。
スポーツでかいた汗とは違う、また別の汗が滴り落ちた。
「礼っ」
「「「っしたー!」」」
部員全員が一斉に頭を下げると、新入生は恒例の体育館掃除が待っている。
シューズを脱ぎ部室へ向かおうとする智希に声をかけたのは、意外にも佐倉だった。
「先輩」
「ん?」
「今日はお疲れ様でした」
「はいお疲れ。俺と喋ってるとサボってるって思われるぞ」
「すぐ行きます」
部室までの渡り廊下を次々2、3年が通っていくなか、智希は先輩が通る度に頭を下げながらタオルで顔を拭き少し不機嫌そうに話を聞く。
早く帰りたいからだ。
「なに」
「俺、先輩がいるからこの高校入ったんです」
「どうも」
「先輩って、プレイしてる時と普通の時って全然違うんですね」
「そうか?」
正直、早く終わってほしい。
気のない返事ばかりしてしまう。