次々に入る2、3年の点数を増やして行く作業をしながら、顧問は誇らしげに腕を組みながら智希に佐倉の話をする。
「うちのフォワードは技術があるんだがなんせ…ムラがあるから」
あぁ、清野先輩ね。
「今年は佐倉と清野をうまく使いゲームを組み立てていく。そこにお前が入ってさらに流れを作るんだ」
「…頑張ります」
隣にいた大谷はクスクス笑い、まるで全国へ行くんだと言わんばかりのこの熱い青春漫画のような空気を気持ちよいと思った。
後半に入り佐倉や他の1年も頑張っているものの、やはり昨年全国大会へ出場したメンバーと最近まで中学生では格が違う。
技術、スタミナ、全てにおいてまだまだだ。
キャプテンの大谷やルーキーの智希がいないというのに、その差は40点になっていた。
「くそっ」
佐倉が悔しそうに肩で息をしながら小さく叫ぶ。
佐倉一人がうまくても、ダメなんだ。周りのメンバーはそれを痛感させられる。
しかし佐倉はキレたり誰かをやじったりしなかった。
なんだ。最近まで中学生だったのに結構冷静じゃん。
だいたい、ある程度バスケが出来る奴は個人プレイが目立つけどあいつはちゃんとみんなにパスしてるし味方がミスしてもどんまいって言いながら励ましている。
佐倉か。
すっかり審判をずっとやっていた所為で体も冷えてしまった智希は、阿部に頼んで上着を借りた。
あと5分で試合が終了する、その時だった。
「よし、泉水出ろ」
「えっ。俺全然アップしてないんですけど」
「ハンデだ」
「心臓発作で倒れたら祟りますからね」
「お前はそんなヤワじゃないだろ」
「………」
ピーっと長い笛が吹かれると、須賀の口から2、3年組選手交代と告げられる。
誰が出るのだろうと全員手を止め様子を伺うと、上着を脱ぎ交代である清野のゼッケンを着る智希が全員に映った。
その瞬間新入生はプレイしている者、していない者全員が歓声を上げた。
「泉水さんだ!」
「出るんだ!」
「まじ!ちょ、ビデオ撮りたい!」
「…泉水先輩」
一人、姫川は何故か頬を染めていた。
「まじすげ、お前の人気。ちょっぴり悔しい」
「お疲れ清さん。かっこよかったスよ」
「……サンキュ」
嬉しそうに口端を上げ笑いかけると、パーンとハイタッチを決め選手交代でコートに立った。