バスケ部専用の体育館の真ん中でまだ終わらない新入生の自己紹介に飽き始め手に持っていたボールをクルクルと回し始めた。
「「「…おぉっやっぱすげぇ泉水さん…」」」
「………」
バスケ長いことしてる奴なら誰でもできるっての。
何かと騒がしくなる。
小声だけど確実聞こえる声が2、3年にも伝わってくる。
智希は少し居心地の悪さを覚えすぐにボールを止めてしまった。
それを察した1つ上の先輩清野道孝(きよのみちたか)は、ニヤニヤしながらそっと智希の隣に立った。
「なんスか、清さん」
「まじ新入生全員お前のファンじゃねーの」
「まさか」
「相変わらず謙虚だねえ」
「…あっ」
突然智希が持っていたボールを奪い、クルクルと回し始めた。
「「「すげぇ、清野さんもめちゃかっこいいよな」」」
ザワっと新入生が騒ぎ出す。
「目立ちたがり屋っすね、相変わらず」
「気持ちイイじゃん。お前は勿体無いよ。いい素材いっぱい持ってんのに」
「俺はコツコツ点数稼ぎしてMVPとか取りたいタイプなんで」
「お前一番そういうの性質悪いんだぞ」
「清野煩い」
「すんませーん」
顧問が一言だけ言うと、清野は謝りながら手を止めた。
時折聞こえる運動場からの掛け声がなんだか心地良い。
そう思っていると、今度はさらに小声で清野が智希に耳元で話してきた。
「そういえばあの姫川って奴、お前の知り合いなの?」
「え?あぁ、昨日初めて会いましたよ。なんか県大会の時来てたらしくて俺のこと覚えててくれてました」
「ふーん。…あいつさ、確実お前のこと好きだよな」
「憧れって言ってください」
「いや、あれは憧れとかじゃなくて、お前に抱かれたいって目で見てんぞ」
「なっ!!」
「どうした泉水ー清野がなんか悪さしたかー」
「ひでっコーチなんで俺が悪いんだよー!」
「アホ、誰がどうみてもお前がちょっかい出してるように見えるわ」