第1章
18
腕は確かだった。
万年市大会止まりだったバスケ部も、全国大会へいけるほどの実力となる。
初めての全国大会は初戦敗退で終わったものの、まだ若い須賀がここまで成長させてきたことに全国の監督を唸らせた。

しかし、昨年県大会で2位の成績で全国に乗り込めたのも、須賀のほかにもう一つ要因があった。
もちろん、1年、2年、3年レギュラー、ベンチ入りを含め選手全員が活躍したというのもある。

それより全国を唸らせたのは、泉水智希の存在だった。

中学の頃から泉水智希は有名で、全国から何校も引き抜きをされていた。

実力は本物だった。
県大会を見ていた関係者全員がそう思った。

司令塔まではいかないが、しっかりゲームを把握し全員にボールを回し、運び、ポイントもとる。
姫川も、このプレイに一目惚れしたのだ。

それに加え柔らかく優しい顔立ち。
バスケ選手の中で大きいほうとは言えないが、普通にいたら長身で綺麗な筋肉のつき方をしている。

モテないわけがない。



智希は、二股は絶対しない。
でも、割ととっかえひっかえなところがある。

自分でも自覚している、愛していないからだ。

毎日死ぬほど好きだけど絶対手を出せない相手が同じ家にいるため、右手だけでは追いつかない。
ある程度の『恋人ごっこ』はするけれど、絶対踏み込ませない領域を持っているためだいたい智希が振られる。
何より、父有志をどんな状況でも一番にもってくるため、呆れられフラれる。

先々週フラれたばかりなので、そろそろ体が限界だと叫び始めていた。
しかも昨日、同じベットで寝てしまった。
よく自分の理性持ったな、と、関心してしまうぐらいだ。

(早く見つけないと父さん襲っちゃう)

始まった部活の中、そんなことを考えていた。
智希効果でバスケ部に新入生は増え、自己紹介も前年度にくらべ長い。
顧問や新キャプテンの大谷聖眞(おおたにせいま)は嬉しそうだったが、正直他の部員達はめんどくさそうだ。

いい処理方法。そう思っていたら姫川と目があった。

「………」

昨日と今日、適度に喋ったというのに何故か目をそむけ顔を赤らめている。
女みたいだな、そう思った瞬間よくないことを考えてしまった。

…いやいや、あいつはダメだろ。
男だし。

今更本当の父親を好きな時点で男だからとか関係ないと思うが、正直智希は男が好きなわけではなく有志だけがいいので、男に興味があるわけではない。
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