テーブルの上にはコンビニで揃えた数種類のパンが並んでいた。
一緒に牛乳も置いてあり、智希に座りなさいと声をかけ朝ごはんを食べさせる。
「こんな…パンとか買わなくても俺作ったのに」
「いいんだよ。昨日具合悪そうだったし。昼飯も俺は適当に食べるから、お前もこれでなんか食べなさい」
すっと2000円を渡され、育ち盛りには足らないか?と財布を取り出した。
智希は文句を言いながらもきちんと買ってきてくれたパンを頬張り、注いでくれた牛乳を飲む。
「…そんなにいらない。1000円でいい」
「ダメ。育ち盛りなんだからいっぱい食べないと。今日から部活始まるんだろ」
「…余ったら返す」
「いいよ、お小遣いにしなさい」
こういうやり取りはもちろん嫌いだ。
子供と父親、だからだ。
「それより本当に大丈夫?頭痛は?」
「治った」
「ほんとかよ」
クスクス笑いながらもやはり心配だと、3つ目のパンを頬張る智希を見つめる。
ちょっと恥ずかしくて、目を反らしてしまった。
有志はほっとしたように溜息をつくとズズっとコーヒーを飲み干す。
「昨日は父さんが隣で寝てくれたから治ったよ」
「あー智、小さい子供みたいに甘えてたもんな」
「…………」
親が子を思う感情と、子が親を思う感情が複雑に入り乱れる。
今とても幸せなのに絶対報われないとわかっている想いほど、辛いものはない。
「じゃあ学校行くわ」
「ん、気をつけて」
ガタっとテーブルから離れ椅子を下げると、牛乳を入れていたコップをキッチンへ運んだ。
水を流し洗おうとすると、キュっと蛇口を閉められ腕を掴まれる。
「洗い物はいいから、学校行っておいで」
「…うん、いってきます」
掴まれた腕が、尋常じゃないほど熱を持っている。