「部活、楽しい?」
「うん」
「そっか」
「試合、仕事休んででも絶対行くからな」
「うん」
一緒に寝ていた小さかった頃を思い出す。
もう完全に体は智希の方が大きくなってしまったけど、この安堵と安らぎはいつまでたっても変わらない。
『今では女の子に夢中なんだーって思ったら』
有志の言葉が何度もループする。
また、涙が溢れてくる。
泣いているのを隠すよう有志の肩に顔を埋めると、ポンポンと背中をたたくそのリズムにまた涙が溢れそうだった。
違う。違うよ。
女なんかに夢中じゃない。
今もこれからもずっと
愛しているのは…
「…ん」
次の日、目を覚ますと有志はベットの中にいなかった。
いつもと同じベットの広さに眉を顰めると、時計を見ながらゆっくり起き上がる。
朝ごはん…
朝も晩もお弁当も全て智希が作っているため、どんなに眠くても起きないといけない。
まだぼやける視界を無理やり擦りもう一度時計を見ると、7時半を過ぎていた。
「…そろそろ起こさないとダメかな」
「…父さん!」
「あ、おはよう」
ドタバタと階段を降りる音がしたと思ったら、智希が制服を乱しながらリビングに入ってきた。
悠長にコーヒーを飲み挨拶をする有志に若干苛立つ。
「なんで起こさないんだよ!朝飯も弁当も作る時間ないじゃん!」
「いいよ。さっきパン買ってきたし」