ガラガラガラ……
ドアの開く無機質な音が響くと、緊急用の所為かベット一つと丸椅子が2つあるだけの小さな部屋が目に飛び込んできた。
真っ白いカーテン、真っ白の壁、真っ白のシーツが清潔感を漂うが逆に無機質で不気味ともとれる。
慣れない病院の匂いに心地悪さを感じながら、唯一色があるベットを覗き込んだ。
「父さん」
有志はシャツのボタンを何個か外し寝息をたてていた。
規則正しく苦しそうではない。
顔色もよさそうだ。
「よっぽど疲れてたんだな」
ゆっくりベットに近づくと、有志の寝顔から視線を反らさずパイプ製の丸椅子に座った。
椅子が体重に圧迫され音が鳴るが、有志はまだ起きない。
カーテンの隙間から日光が注ぎ込まれてとても明るい。
そういえばまだ昼過ぎだもんな。
そう思いながらじっと寝顔を見つめる。
「父さん」
呼んでみる。
起きる気配はない。
「父さん」
小さく呟きながらシーツから出ていた右手を握った。
暖かい。
生きてる。
「っ………」
涙が溢れてきた。
どんどん瞼に溜まり、目を閉じた瞬間ポロポロと溢れ出てくる。
「よかった」
喉を鳴らしながら唸るように声を発し、震えながら有志の手を頬にあてた。
暖かい、手。
まるで何か確かめるように何度も頬に擦りつけ、次第に智希の涙で濡れていく。
とてもとても熱い涙。
「っく父さっ父さん」
有志の手で受け止められなくなった涙はシーツにポタポタと零れていく。
するとピクリと有志の手が動いた。
智希も反射で体を震わせ有志の顔を見ると、眉間にシワが寄って目が軽く痙攣している。
「……ん…」
低い有志の声が響いた。
智希は俯いていた顔を上げ有志を見つめる。
涙で目がぼやけているというのに、拭うことを忘れて見続ける。