「ごめんな、智希くん試合中だって知ってたのに学校に連絡しちゃって」
「いえ、連絡してくれてありがとうございました」
智希は深々と礼を言うと、ぎゅっと拳を握りしめ立ち上がった。
「あとはもう、大丈夫なんで」
「うっ、うん」
智希君、こんな表情してたっけ。
重里は智希の暗く闇の潜んだ表情に息を飲んだ。
反射的に立ち上がり智希の肩に手を置く。
「と、とりあえず今は休養が必要みたい。明日の仕事は俺がなんとかするからゆっくりしてくださいって言っといて」
「はい。本当に、ありがとうございました」
再び深々と一礼する智希を見届けると、重里は廊下を歩き去っていった。
智希は重里が角を曲がるまで立っていると、見えなくなった瞬間深呼吸をした。
さっきまで汗をかいていたというのに、今では冷や汗に代わり少し肌寒い。
305号室
と書かれた標識を見上げもう一度大きく深呼吸すると、引きドアを掴み力を込めて一気に扉を開けた。
第2部・終了