第2章
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「?」

顧問が向かった先は、智希だった。

「泉水っ!大変だ!」

「?」

中断されたゲームは耳に残響音が残るほど静かで、顧問の声だけが体育館に響いている。
智希はリストバンドで汗を拭うと、腰に手を付き耳を傾けた。



「お父さんが、倒れたそうだ」



サーっと、血の気が引いていく。

顧問も智希の顔色の悪さに気付いたのか、心配そうに肩を掴み顔を覗き込んだ。

「試合は気にするな、大事なお父さんだろ、中央病院だ」

「かっ、監と、く」

「智希、あとは任せろ」

「清、さん」

みんながまるで自分の事のように心配し、声をかけているのに。

「俺、おれ」

智希は動かない。

動けない。


「泉水さん」

「佐倉」


そこへ一年で唯一背番号を貰えた佐倉が、軽く汗をかきながらコートに入ってきた。
急いで簡単なアップを終え向かったようだ。

「俺、泉水さんと交代だって」

佐倉の顔は興奮しているのか冷めているのかわからない。
声のトーンは、とても低い。

「ほら、行ってください」

「佐倉」



「これは、泉水さんが望んだこと?」



智希は息を飲みやっと動いた足を回転させ顧問に一礼した。



「すいません!失礼します!」

「おぉ、気をつけてな」

「慌てんなよ」

「落ち着いて、な」

「はい!」

メンバーや練習試合校の生徒、審判に深く礼をすると、ユニフォームのまま体育館を飛び出した。
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