少女あばれる




『はーなーせーっ!!』

「誰が紐解くかよ馬鹿」

『ミーは馬鹿じゃないーっ!!ただちょっと頭が弱いだけーっ!!』

「それが馬鹿じゃ『違うのーっ!!』


「あーっ、うっさいっ!!これでも食べてろっ!!」


あーもー、ホントにこいつ何なんだよ

ベル溺愛のカエルちゃんかと思えば違うし


なにしろ
めちゃくちゃうるさい


「なんでこんな奴誘拐したんだろ俺……」


まぁ、結果としてベルが釣れたというよりこいつの兄貴が釣れたわけだが……


『そりゃ、あんたが拐う相手を間違えたからですよー』


さっき嫌がらせのつもりで渡したスルメをがしがし噛みながらもっともなことを返してくる


『それとあんたミーと会ったことありませんー??』

なんか見覚えがありますー
嫌な奴だとミーの直感が告げてますー



「お前失礼な奴だな、殺すぞ」


『ミーを殺したらヴァリアーは動きませんよー』
そういう集団ですからー



「ちっ、お前マジうるさい」



馬鹿なくせに地味に的確な指摘に無駄に苛つく


そして、よくよく見たらあることに気づいた


「へぇえ、お前も拐われてる意識はあるんだ♪」

そう、こいつの体が小刻みに震えている


「ししし♪」


『ちょっと寒いだけだっつのー』


「はっ、どーだかな」


とか言いつつ強がっているのは丸わかりだ


「しし、どうやってあいつら殺してやろうか♪」

普通に殺しちゃ何にも面白くない

長年の因縁にやっと決着をつけるのだ


派手にっ!!残酷にっ!!惨めにっ!!


考えるだけで、口角が上がる



「なぁ、どうやって殺して欲しい??」


ぐいっと顎を持ち上げて勝ち誇ってみせる

しし、まだ震えてやんの






『ヴァリアー舐めんじゃねーよ』







その瞳には強い意志が宿っていた


『負けないよ、にーにもお化けも』


「俺様の手によって殺されんの」


『ミーが殺させない』



むかつく、なんかわかんないけど凄いむかつく


掴んでいた顎を乱暴に離し、そのまま地面に叩きつける


『つっっ!!』



「明日、明日がお前らの命日だ」



もうこいつと話すだけ無駄
ベルを殺してこいつも殺す
決定事項が一つ増えただけだ



「覚悟しとけよ、ベルフェゴール……」












あいつがこの部屋を出ていってから、もそもそと起き上がる


『ちくしょー、思いっきりやりやがってー』


打ったところが痛い


そして、奴は何なんだ
ちょっとお化けに似てると思って油断してたら全然違う


本能が全力で逃げろと告げていた
自然に身体が震えた
ヴァリアーの入隊試験でも、初めて人を殺めたときも、どんなに強い敵と戦っても



こんな恐怖感じたことない





精神訓練だって受けたのに、それでは計り知れない何かがある

自分じゃどうしようも出来ない




『パパン……、ママン……、にーに……、』



早く早く助けて下さいー
思いっきりぎゅーってして下さいー




こんなにも家族の顔が浮かぶ
自分の一番大好きな人たち


思い出すだけでちょっとだけ安心する

それに、この時代にはにーにも来てくれた
(多分正確には来させてしまった)



大丈夫、大丈夫、
そう言い聞かせることしか出来なかった









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