少女たたかう



人間とはスイッチひとつでこうも変わるものなのだろうか


自分の目の前にいる少女は、自分の娘だといったあの子と本当に同一人物なのだろうか


(……っ、オーラが全然違いますー)


『ママン、行こう』

「は、はいー」


翡翠の髪をなびかせ、手にした小銃を入念にチェックしながら弾を確認している


(まぁ、この子もヴァリアーの一員ってことですかねー)


『ねぇ、ママン。あのお化けって強いの??』

「……強いんじゃないですかー」

仮にも幹部ですしー、

『ならよかった。


加減できなくて殺さずにすみそう』

瞬間、一気に刺さる殺気に鳥肌がたつ


(この子一体……)




「お前ら遅いし、王子待たせるとかマジない」


突然聞こえたベルフェゴールの声ではっと我に帰る
トリップしている間にどうやら訓練場についたらしいすでにスクアーロ、ボスをはじめ幹部一同揃っている


興味本意でやってきたのだろう


「堕王子が早すぎるんですー」

「口ごたえすんなし」

「げーろー」

かぶっていたカエルメットを叩かれる


最近は彼に甘えてばかりいたのでなんだかこのやりとりも久しぶりだ


「ぶぉぉい、始めるぞガキどもぉ゛

一応匣は使ってもいいが壊すんじゃねぇぞぉ゛」

「おい、子ガエル。王子が直々に相手してやるんだからな。光栄に思えよ♪」


『死なないで下さいよ。ミー本気でお化けを潰しにかかりますから』


一瞬でベルフェゴールや幹部の顔つきが変わる

一同彼女の異様なさっきを感じたのだろう


「やってみろよ」

『言われなくても』


それを合図にアルファが一気にトリガーをひく

キィンとナイフと金属同士が弾かれる高い音

「いきなり、やってくれんじゃん」

『ミーは手加減しません』

そう会話しつつもお互いに攻撃の手は一切緩めない



目の前で繰り広げられる激しい戦いに一同目を奪われる

「凄いわねあの子、ベルちゃんとほぼ互角じゃない」

「確かに、ベルも加減してるようには見えねぇ゛」

「DNAって凄いわね」

そう思わない??フランちゃん と話を振られてもどう返してよいか分からない


それよりも目の前のことに必死で

彼らの姿を追うことに全神経を集中させる

ガクガク震える体を両手でしっかりと抱き抱えて

でも視線は前に

目を反らしてはいけない
自分の本能がそう告げていた

(センパイ……、アルファ……)






(なんなんだ、さっきから感じる違和感は)

どう考えてもおかしいのだ

自分とこの少女は確かに初対面のはずだ

なのに

(完全に攻撃パターンが読まれてやがる)

「……ちっ」

まただ。また自分の行く先にはこいつが待ち構えている


彼女がこの部屋に仕掛けをできるはずがない


とすると、彼女の能力か

または未来で自分の攻撃パターンが読まれるほど手合わせしていたか


いずれにせよやりにくいことこの上ない


早く打開策を見つけなくては








一体なんなんですかこの目なしお化け!!


攻撃パターンがパパンにそっくり過ぎて怖い


ほらまただ。何度もパパンと修行したミーだから分かるパパンのクセ


なんで??どうして??目の前でナイフを投げるこの男は絶対にパパンじゃないのに

そう見えないのに

心がパパンだと叫び続ける

戸惑いは一瞬の隙を生む

(しまった!!)

一気に懐に飛び込んでくるお化け

素早くトリガーを引いたものの体をひねって避けられる


そしてまた目を見開く

彼が避けた銃弾は真っ直ぐにママンに向かっていた

『やだっ!!!!ママン!!!!』


思わず目をつぶる


「ベルセンパイ!!!!!!」
……えっ!!

目を開くとママンをお化けが覆い被さるようにして守っていた


そして背中からは血


「やだっ!!センパイ!!センパイ!!」


泣き叫ぶママンの声とルッスさんを呼ぶスクアーロさんの怒鳴り声


力が一気に抜けてへなへなと床に座り込んだ


様々な気持ちが混じりあってもうどうしたらいいかわからなくなって涙が溢れる


……ママンを守りにいったの??

……あの体勢から??

……ママンを殺してしまいそうだった

……ごめんなさいルッスさんが急いで部屋から匣を持ってきてお化けを治療し始める


皆が医務室に向かっていくなか独りポツンと取り残された


どうすることもできなくて独りで泣き続けていると

目の前に大きな影が落ちた


しゃがんでいるせいで深紅の眼がしっかりと自分を捉える


『……ひっく、ボスー』
このままかッ消されるのだろうか

伸びてきた手に思わず身を縮ませる


しかしその手はそのまま頭に伸びた


「てめぇは、俺達が提示したテストを受けただけだ」

『……ひっく、でもー』

「フランはあの銃弾を避けるだけの能力があった
それを無視して飛び込んだのはあいつだ」


『うわーん、ボスー!!』

珍しいボスの優しい言葉に耐えきれなくてボスに抱きついて思いっきり泣いた


その間ずっと背中をポンポンしてくれる


そのリズムに安心していつの間にか眠りに落ちるのだった




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