兄よろこぶ



「シグマ様っ!!整いました!!行けます!!」


「遂にキターーーーー!!」

「うしし、やっとじゃん♪」

親父の青眼が俺を見つめる

「それと、アルファのことくれぐれも頼むぞ。」

「わかってらぁ、安心しろって」

「あのことも含めてだっつの」

「……わかってらぁ」


よろしいですか、という隊員の声に頷く

「……大丈夫だって、昔のままじゃないんだし

あいつも成長してるって」

「だといいけどな」

「……それじゃ、俺行くわ」

「……ん」


どん!!!!!!

という音と同時に彼の姿が消えた




息子を見送り、部屋に戻る

体を愛用のソファーに預けると、深々と大きく息を吐き出した


アルファは大丈夫だろうか


その想いだけが胸を占領する


あの日、あの子たちがまだ幼かったあの日の事件を考えるだけで未だに後悔と自責の念で押し潰されそうになる


もっと自分が強ければ
もっと早く気づいていれば

あの子たちにあんな想いをさせずにすんだ


シグマはともかく、アルファにとってはトラウマでしかないあの事件を彼女はまだ覚えているのだろうか


もしかしたらもう忘れてしまったかもしれないが、過去の自分が引金となって記憶を引き出してしまう可能性はかなり高い

アルファが選ばれなかった理由は主にそこにある(頭が弱いことももちろんだが)



「ただいま帰りましたー」

電気もつけずに何やってるんですかもー、と近寄って来るのは何年経っても愛しい妻の姿で


「おかえり」

といいながらその体を両手で抱き込み、うなじに顔を寄せる

「今日はやけに甘えたですねー」

と言いつつ何年経っても可愛らしく頬を染める妻に愛しさがつのる


「アルファが……、過去に行っちまった……」

「あれシグマの任務でしたよねー??」

「あいつ勝手に書類奪ったんだと」

「ふふふ、さすがアルファですー」

「……シグマも追っかけてったし、大丈夫、だよな」

「……っ!!大丈夫ですー。あの子の強さはセンパイが一番よく知ってるでしょー。信じてあげるのも親の仕事ですー。」

「……シグマにも同じこと言われた」

「気にしすぎですよー、センパイ。
確か……にあのことはミーも忘れられません。
その想いはきっとセンパイと同じですー。
だから、……だからこそ、次に進みましょー」


フランをぎゅっと抱きしめ直す

「……ん」

「だいたい、センパイはアルファに過保護すぎるんですー!!」

「だって、お前に激似でチョーかわいいんだもん」

「だからって甘やかしすぎですー」

「……かわいいは正義」

「それですよそれー、あの子の頭が弱いのは絶対センパイのせいですー」

「それは関係ねーだろ」

「いーえ、ありますー」

「お前だって、シグマに構いすぎだっつの
男は少しくらい厳しく育てたほうがいいんだよ」

「シグマはセンパイと違ってびっくりするくらいいい子ですからねー
構いたくもなりますってー」

「……シグマの方がいいのかよ」

「センパイだって、アルファの方がいいくせに……」


すっかり不機嫌になって頬を膨らませそっぽを向くフラン

こちらを気にしているのかちょくちょくちらっと自分を見つめる翡翠の瞳に胸が熱くなる


「俺はフランがいい」

耳元でそう囁けば、さらにぎゅうぎゅう抱きついてくる

「センパイ……今あの子たちいないんですー」

「二人きりなんですー」

「だから……??」

最後まで言えって

「たまにはミーにもかまって下さいー」


自分の胸に顔を埋めているフランの顔は真っ赤に染まっている


「よくできました」

そういって軽く柔らかな唇をあまがみする




いつまで経ってもこんな二人だが願うことはただひとつ

かわいいかわいい子供たち
過去でもどうか無事で

そして

未来に幸多からんことを



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