兄しどうする



時を同じくしてこちらは未来のヴァリアーアジト

「こんなとこか……」


必要最低限のものをカバンに詰め込み
いつものように任務の仕度をする


ただ……今回の任務は特別である


なんたってあの装置の実験台なのだ


期待反面、不安反面


正直どう転ぶか全く想像がつかない


「……覚悟はしておこう」

そうひとりごちるのは、何を隠そうベルフェゴールとフランの息子でありアルファの兄

仮に名前をシグマとしよう


そしてはたと気づく

(書類がない……だ、と)

確かに昨日しまったはず……

出した記憶はない


とすると、考えることはひとつ


迷わず我が妹の部屋に直行し、ノックもせずにドアをこじ開け、ずかずかと侵入する


「アルファー、書類返せー」

……虚しく声だけが響く

気配を探ったもののこれは確実にいない


ここにいないとすると……次は

「親父ー、アルファ来てる??」

そう、アルファは驚異的なファザコンである

そして親父もアルファを溺愛している

そりゃもうお袋が嫉妬するくらいに

嫉妬したお袋はそうすると無駄に俺にかまい出す
俺はそれをわかっているから好きにされるがままになる

すると親父はあり得ないほどの殺気を俺に、そう俺に向けるのである

そしてお袋を呼び寄せる、結果として、親父が両手に花状態になって終わるのが常だ

どうだ、完璧に被害者にも程があるだろう


正直、うちの家族は個性が無駄に強い


俺様気質だが実力は確かな親父。

脱力系毒舌蛙なお袋

天然記念物すぎる妹

そんな家族内での俺の立ち位置は間違いなく

保護者か苦労人か片付け役

恐らくあの妹を見て育ったのが一番大きい


随分話がそれたが、彼女が今日任務に出ていないことは確認済み

とすると、ここしかない

「あれ、シグマ今日あの任務の日じゃねーのかよ」

「ボスからの書類盗難されたっぽい」

「あー、アルファ行きたがってたしなぁ」

「そ、もしかして来てなかったり??」

「たりするな♪」

「……マジかよ」


本当にどこいったカエル2号

お兄ちゃん凄い困ってるんだけど


「ベル様ー!!シグマ様ー!!」

突然凄い勢いで平隊員がこちらに向かってくる

「どうしたし」

「報告します!!例の装置無事に作動しました!!成功です」


「……ちょっ、俺まだここにいるんだけど」

「……っへ、アルファ様と御交代されたのでは……??」

「してねーよ!!」

「もっ、申し訳ありません。書類を持っていらっしゃったので、転送してしまいました!!」


てっきりシグマ様が遂に折れたのかと……


恐らくこの平隊員に非はない

アルファが散々変わってと自分にねだっていたのは隊員周知の事実だ


「はぁ、まぁいいけどさ」

そこでベルがふと口を開いた

「なぁ、過去からこっちに帰ってくるレクチャーあいつ受けたのか」

「いや、もともと俺一人の任務だから俺しか受けてないはず……」

「あいつ帰ってこれなくね??」


たっぷり数十秒


「あーーーーーー!!」


一同顔が青ざめる

「おいっ、今すぐもう一回装置を作動させろ!!」

「そ、それが、起動するにはあと数時間必要です」「いーから早くっ!!」

「っは!!」



「さすがアルファ、やってくれるな」

ピキと青筋がたっているのが自分でもわかる

「頑張れ、お兄ちゃん♪」

少し黙ろうか、親父


シグマ到着まであと数時間




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