王子けついする




部屋に入りソファにどかっと腰を下ろす


はぁ、と溜め息をつきて天を仰ぐと

見慣れているはずの天井がやけに遠く感じた


「……はは、だっせ」

小刻みに震える自身の手
隠れた額に滲む脂汗


上手く誤魔化せていただろうか


こんな自分と出会うのはいつ以来だろう


少女が、アルファがフランの未来の娘だとわかった瞬間、何か得体の知れない衝撃が体を突き抜けた


娘がいるということは

愛しい女が誰かと結婚したということで


愛しい女を孕ませた奴がいるということだ


頭ではアルファの存在を理解できても心が追いつかない


いや、違う。追い付きたくないのだ


少女の存在を認めてしまったら……





自分以外の誰がフランを孕ませた可能性を認めると言うことだ



(考えたくもねぇ……)

あくまでも可能性とはいえ、それを否定するものは現時点ではなにひとつとしてないのだ


第一、アルファは自分に全く似ていない


それに青い瞳なんてヨーロッパでは珍しくもなんともない


自分と少女とは繋がるものがないのだ


少女と自分の繋がりを探せば探すほど


自分と少女に繋がりがないことばかりが浮き彫りになっていくようで


それは少女と血の繋がりがないことを暗示しているようで


それはフランが隣にいない未来を暗示しているようで





フランを信じていないわけではない


彼女の気持ちは真っ直ぐに自分に向いていることは十分理解しているし


離すつもりも離されるつもりもない


今までも、そしてこれからもずっとそばにいて慈しみ守り続けると誓った唯一の女


自分を変えた唯一の女



「愛してるよ、フラン」

自分には彼女を愛することしかできないのだ


「愛してる」


その気持ちだけは、誰にも否定させない

させるわけにはいかないのだ


たとえそれがフランと血を分けた娘であっても


それだけは……


もう一度息を吐き荒ぶる気持ちを強制的に沈めていく


フランが来るまであと少し


それまでに、彼女の不安が少しでも和らぐように いつもの自分に戻らなくては


今日の出来事で一番衝撃を受けたのは自分ではなくフランなのだから


彼女の心を癒せるのは自分しかいないのだから




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