父親に瓜二つな男を眺めながらシグマはとんでもないことに気付いた。
(やばい、ヴァリアーのセキュリティエリア出ちゃった)
つまり、夢中で遊んでるうちに敷地の外へ本格的に出てしまったらしい。
そりゃ敵にも遭遇するわけで…
ヴァリアーのトラップなら遊び半分で回避できるが、それとこれとは話が別だ。
今までに自分が遭遇したことのないピンチ…
どう切り抜ける…
必死に思考を巡らせた
その一方でラジエルは歓喜していた。
ベルフェゴールに子供が生まれたことはマフィア内でもかなり知られたことだが、というか夫婦で有名なのだが、どのパーティーでも子供の顔は見たことがないと言われており、もはや嘘なのではないかとさえ噂されていたのだ。
正直、幼少期のベルを知っている自分からすれば、フランとの関係さえ怪しいと睨んでいたのに…
今目の前に驚いたような表情を浮かべているのは間違いなく彼らの子供だ。
「ししししし」
笑いが止まらない。
こいつらをとらえてどうしてやろう。
ベルをこれで呼び寄せて、抵抗できない奴をずったずたにして
「しし、お楽しみはとっておかなきゃなぁ」
そのためには…
こいつらを捉えなきゃ♪
似てる。
髪型が違うけど、笑い方も、しぐさも、父親に…
相手の目つきが変わった。何か仕掛けてくる。
「オルゲルト、手ぇだすなよ」
来る!!!!
アルファを抱きながら一気によける。
「痛っ…」
「にーに!」
右腕の上部が軽く切れた
「せっかくだから、これでお前らをいたぶってやるよ」
「あれは…」
パパンのナイフ
「俺が操れないわけねーだろ?」
「逃げるぞアル!!」
手を引きながら来たであろう道を必死に駆け戻る
「しし、無理♪」
振り返れば飛んでくるナイフと男
必死にアルファをかばえば、背中にナイフが突き刺さる
「にーに!!」
「だいじょう、ぶ、行くぞ…」
「へぇ、まだ逃げんだ」
しばらく走ったところで足がもつれる感覚
だめだ、逃げらんない
「逃げろ、アル!!早く!!行け!!」
「でも、」
「いーから!!走れ!!」
よろよろたちあがりながら、妹が泣きながら走り去るのを確認して、完全に足音が去ったところで奴に居直った
「へぇ、妹を逃がすか…」
「はぁ、はぁ」
ダメだ、貧血で前が霞む。
時間を稼がなきゃ、せめてアルがアジトにたどり着くまで
いや、一秒でも多く
「なら、お前をやった後で妹を殺すかな」
「殺させない」
「ふーん、なら死ねよ」
何かが身を切り裂く感覚と
見たことない紅と
見覚えのある笑顔
真っ黒になる視界
にげろ、アル…
ネクスト
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