「お前が好きだ。…付き合って、くれ」

あの告白の返事は、NOだった。だって私は彼のことをほとんど知らなかったし、話したこともなかったから。そんな彼の気持ちがあまりにも突然のことで、信じられなかった。彼にそう告げると彼はこう言い放った。

「一目惚れ、だった。初めて見かけた時からずっと気になって仕方なかった」

そんなことを言われても中身を知らない人間をよくもそこまで好きになれるものだな、と感心した。別に私も嫌いじゃない。むしろ、好きなんだと思う。カッコいいし、江ちゃんの話を聞く限り妹思いで優しいし、勝負事に関しては熱く、常に燃えている。少し不器用で感情的になりやすい部分もあるみたいだけれど、それも別にマイナスになるわけではない。だから彼はカッコいい部類に入るのだと思う。モテる、とも思う。なのにどうしてこんな取り立てて可愛くもない普通の、それに話したこともない相手に本気になれるのかが私にはまったく理解できない。
彼もまた、言うに違いない。思っていた人と違う、と。

「お気持ちはすごく、有難いです。でも…」

何と言えばいいんだろう。言い方を考えていると彼はこう言った。

「…まぁそりゃそうだよな。いきなり話したこともねぇ奴に言われても困るよな」

彼は一歩、私に詰め寄った。

「なら、お互いのことを知るためにもデートしねぇか。別にそれくらいいいだろ?」

私に、断る理由なんてなかった。寧ろ喜んでも良い状況だと思う。こんな素敵な人とデートが出来るなんて。

「それなら、別に大丈夫です」
「よかった」

彼のはにかんだ笑顔が可愛くて、思わず見惚れてしまった。




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