松岡…凛さんとはそれから暫く数回デートをした。ご飯を食べたり、お散歩したり、ゲームセンターに行ってみたり。ゲームセンターなんて普段行かないから新鮮だった。一緒にカーレースをやって、初めはコテンパンにされたけど、それから暫くやるうちに結構上手くなった。でも、まだ勝てたことはない。
デート、というよりは普通に仲の良い友達と遊んでいるような感覚になりつつある。彼といることに慣れてきたのもあるし、彼は初めてのデート以外手を繋いでこなくなった。遠慮しているのかもしれないけれど、正直なところホッとしている。


「おーい?深雪ちゃん?」

名前を呼ばれて顔を上げると、江ちゃんが私の前で手をかざしていた。話している途中でぼーっとしていたらしい。

「あ、ごめんごめん…。なに?」
「いや、大した話じゃないからいいんだけど、最近ぼーっとしてること多いね?」

確かに最近江ちゃんにこうやって、話しかけられること多いかもしれない。ぼーっとしている原因が何かなんて、明確に分かっているけど。

「なんかあったら相談してね?1人で抱え込まないこと!」
「うん。ありがと、江ちゃん。でも今別にそういうのじゃないから…」

江ちゃんには何だか見透かされている気がする。前にも恋愛のことで心配かけてるからなぁ。

「江ちゃーん!深雪ちゃーん!お待たせー」

着替え終わったのか、ようやく部室の外に4人が出てきた。一番に駆け寄ってきたのは渚くんだ。天方先生に鍵を渡し、みんなで帰路を歩く。
江ちゃんとふたりで話していたら、渚くんが何やら笑顔で私に近づいてくるのは気のせいだろうか。いや、気のせいじゃない。
なんだか、嫌な予感がする…。

「深雪ちゃーん。あのさー、こないだ、凛ちゃんとふたりでいなかった?」

え、と私が声を出すより先にみんなが一斉に声を上げた。遥先輩はあまり反応はないけれど、真琴さんと伶くんは目を丸くしている。

「えっ!?深雪ちゃんと凜って接点あったっけ!?」
「え、えっと…」
「こないだふたりで仲良くゲーセンで遊んでるの見ちゃったんだよね!」
「え、あ、その…」

どう答えようかと思いあぐねていると、私の隣で江ちゃんが溜め息を吐くのが聞こえた。どうして江ちゃんが溜め息?溜め息を吐くべきは私じゃないか。

「バレちゃったかぁ…」

私の心情を吐き出したのは何故か江ちゃんだった。みんなが一斉に江ちゃんに振り向く。

「江ちゃん知ってたの!?」

渚くん、それも私のセリフだ。

「まぁ、知ってたというか…お兄ちゃんから相談を受けてまして…」
「え、」

それを聞いて一番に声が漏れたのは私だ。相談を、受けてた?だから江ちゃんは「相談してね?」って言ってたのか。お見通しというより、筒抜けだったらしい。

「ごめんね、深雪ちゃんとしては言い辛いから黙ってたんだよね?でも、私実は知ってたの…」
「うん、まぁ…言い辛いというか、なんというか…」

自分の兄の恋愛話なんて普通あまり聞きたくないんじゃないかな、とか思っていたんだけれど、まさか相談されていたとは思いもしなかった。仲が良いのは充分分かっていたけれどここまでとは。

「え!で、結局どういうことなの!?」

取り残されている男性陣が話に割って入ってくる。渚くんが私の手を引いて答えを強請る。あざとい。あざといよ渚くん…。

「えーっと…」

告白されて、なんてそんな恥ずかしいこと言いたくない。どうしよう、なんと言えばいいんだろう。でも正直に言うしかない、よね。

「えっと。その、」
「わー!深雪ちゃん顔真っ赤!なになに!?付き合ってるの!?」
「へ!?あ、違う違う!そんなんじゃなくて!その、えっと…っ」
「渚、ちょっと落ち着いて」

私の顔に釣られるように真琴さんも真っ赤な顔をしながら渚くんをたしなめる。伶くんも顔が少し赤い。みんなそういう話は少し苦手らしい。

「え、えっと……、その、実は告白されて…」
「ええええ!?凛ちゃんに!?」
「あれ、でも付き合っていないということは…」
「……うん、お断り、しました」
「え、何で!?」

ああ、渚くんの好奇心をどうにかして欲しい…。

「話したこともなかったし、突然だったから…」
「あー、そっかぁ…」
「え?ということは凛さんの一目惚れ、ですか?」

顔に、熱が集まる。一目惚れ、一目惚れなんだ、よね。やっぱり。私が何も言えずに黙っていると、江ちゃんが私達の間に割って入った。

「もう!みなさん落ち着いて下さい!深雪ちゃんの顔、真っ赤ですから!取り敢えず、わたしは深雪ちゃんに話があるので今日はここで解散です!」

と言って江ちゃんはみんなの、私の有無を言わさずに私の腕を引いてぐんぐん何処かに歩き出した。
みんなの人影が視界から無くなった頃、江ちゃんはようやく立ち止まり、私に振り向いた。

「勝手に連れてきてごめんね。今日時間ある?」
「大丈夫だよ。私も、江ちゃんにちゃんと話したい」
「そう言ってくれて嬉しい!」

江ちゃんは嬉しそうに私の手を引いて、また歩き出した。
その江ちゃんの後ろ姿に、凛さんが重なって見えた。


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