まだ頭がぼんやりと働かないまま、ゆっくりとカラダを起こすと今日はすんなりと起きられた。いつもなら纏わりつく腕があるのに。
 ベッドから降りて洗面所で洗顔をして、顔を拭きながら一息吐いてようやく気がついた。そうだ、京介は仕事で一週間前から出かけていた。今回は真木さんも同行しているので、船内で実質No.1の立ち位置にされているのは私だった。

 私がパンドラに来て一年あまり。初めはパンドラの人たちは私を快く受け入れてくれなかった。いきなり少佐が私を連れてきて、婚約者だと言い放ったからだ。出会いはもっともっと昔だけれど、そんなの周りには関係ないし。それにより少佐を慕う澪などにすごい剣幕で睨まれたが、少佐が怖いのか結局澪も誰も手出しはしなかった。でも次第に私の能力や少佐と私の関係を見ているうちに誰もが半ば呆れながら――だって少佐が片時も傍に置こうとするから――認めてくれるようになり、今では少佐がいない時は私がトップに立って指揮することも多い。

 普段はこのまま暫く少佐と朝を過ごしてから外に出てってところだけど、今日はひとりだし久しぶりに朝の陽光を浴びに甲板にでも行こう。
 すると、そこには先客の紅葉と葉がいた。
「おはよう」
「あら、おはよう。この時間に会うなんて珍しいわね」
「ま、あのジジイ今日はいねーしな」
 そう言いながらも少し寂しそうな葉に思わず笑みが溢れた。態度はいつもつれないのに、結局彼も少佐が好きなのだ。
 葉の隣に並び、朝の日差しを浴びてキラキラと輝く水面を眺めた。久々に見る朝の海は思っていたよりもずっと綺麗だった。普段はもっと日が昇ってからしか見ないけれど、たまには少佐と一緒に見に来ようかな。
「ねぇ、なまえ」
「なぁに?」
「いつ結婚するの?」
「――え?」
 唐突に投げられた、予想していなかった質問に思わず目が点になった。――結婚、そういえば、婚約者だった。普段はそんな話は微塵も出てこないからすっかり忘れてたけれど。
「お、それ俺も気になってた。確か初めの紹介でも”婚約者”って紹介だったしな」
「早くしないとどんどん老いちゃうわよ〜?」
 紅葉の言葉に思わずグッと押し黙った。普段はあんな風だから若く見えるけれど、実際は80歳のおじいちゃんだ。いつぽっくり逝っても――…





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