助手席に座って、運転席に座っている修二の横顔をずっと見つめていた。修二はまだ怒っているようだった。私は泣いてはいたけれど、チルドレンの騒動で何だかもう、少しどうでも良くなっている部分があった。そして何だか今なら素直に全てを話せそうな気がした。
 結局、光一との食事はなくなり、予定だった仕事を無理やりキャンセルしてくれた修二の家に行くことになった。彼の家に行くのは初めてではないが、あまり行くことはないので少し緊張する。さっきから少しそわそわしている。

家に着くと修二は助手席の扉を開けて、玄関までエスコートしてくれた。そういうところはいつも通りで嬉しかった。けれど、その表情は固いままだった。
 部屋の中に入ると一変して急に手を強引に引かれ、寝室に連れて行かれた。吃驚して手を引こうとするが、男の力には適わず、修二はいとも簡単に私をそのままベッドに押し倒した。初めてのことに戸惑って、修二が見られずに視線を彷徨わせていると、修二はそのまま私を抱きしめた。そして、酷くか細い声で呟いた。
「…ごめん」
「え?」
 当然さっきからの態度からして怒られると思っていたので、あまりにも素直に吐き出された言葉を聞いて驚いた。修二は私をさらにきつく抱きしめてそのまま黙ってしまった。
「…修二?」
 少し苦しくて身じろぐと力が緩んだ。けれど修二はまだ黙って私を抱きしめている。きっと今落ち着こうとしているところなんだろう。力を抜いて修二の背に手を回し、その背を優しく撫でながら修二が落ち着くのを待った。
 暫くして修二は体を起こし、私もそれに釣られるようにして体を起こした。修二は私の髪を耳にかけ、じっと私を見つめた。その表情は先ほどとは違い、申し訳なさそうにぎこちない笑みを浮かべている。
「ごめん、深雪。お前が苦しんでたのに気付いてやれてなかった。…ごめん、」
「修二…?」
「皆本に言われたんだ。お前がずっと皆本に俺のことを相談してたってことを。俺、そんなことも知らずにあんなこと言って…しかも、お前にとって皆本は昔からの仲だからやましいことなんて、あるはずないのにな…。お前を信じてやれなくて、ごめん」
 情けないほど落ち込んだ修二の姿を見て、思わずその体を抱きしめた。修二にも非はあった。けれど私にも非はあるから、彼だけがこんなに胸を痛める必要なんてないのに。
「修二、聞いて欲しいことがあるの」
彼から体を離し、真っ直ぐ見つめると彼の瞳は少し揺らいだ。何を話してくるのかが不安なんだろう。






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