永遠 | ナノ
薔薇乙女一の頭脳派



(あーあ、暇だなぁ・・・)


少年は小さく溜め息をつき、思いっきり腕をあげた。
ボサボサの黒髪に、眼鏡、青色のトレーナー、藍色のジーンズという軽い格好をしている。


「こらぁ!チビ苺!!翠星石の奇麗な如雨露に落書きをするなですぅ!!!」

「だって、だって翠星石が前、ヒナの苺を食べちゃったからお返しなのよっ!」

(相変わらずうるさいなぁ・・・僕を静かにさせてくれよ・・・)


リビングで走り、騒いでいるのは薔薇乙女第3ドール[翠星石]と、同じく第6ドール[雛苺]である。

翠星石は、何処かの民族衣装のような深緑のロングスカートのエプロンドレスにフリルが付いている服を着ている。
目の色はオッドアイで右目がルビー色、左目がエメラルド色。
髪は床に届く程の茶色のロングヘアで、後ろで2つに分かれてロールしている。頭には白いヘッドドレスを被っている。
さらに雛苺の方はと言うと、頭に大きなピンクのリボンをつけ、ピンクを基調としたベビードールの活動的な服装である。
目は黄緑色で、髪は金髪で内巻きの縦ロールをしている。

2人が騒いでいる理由は、雛苺が翠星石の如雨露に落書きをしたから―だそうだ。


(んで、真紅の方は・・・と、まだ読書かよ・・・)


その少女は、真紅色のワンピースにケープコートにボンネット状のヘッドドレスを着ている。
目は青色、髪は背丈よりも長く先がカールした金髪のツインテールである。

ソファにちょこん、と座りながら本を黙々と読んでいたが、自分の方を見ていることに気付いた、[真紅]と言われている少女は顔の位置を微動だにせず、視線を泳がせた。


(そういえばこいつらって、一応人形だよな・・・。文字とか読めるのか?)


その本の内容を確認すると、少年は頭を押さえた。


(ドイツ語かよっ!)


「なぁに?ジュン。どうしてこっちを見るの??読書の邪魔になるわ」


いかにも嫌そうな顔をしながら、やっと真紅は口を開いた。


「べっ、別に何でもないよ!」


桜田ジュンは自分に指摘され、少し動揺している様子だったがそこをなんとか誤魔化した。
ジュンはそれを疑問に思い、暇つぶし代わりに姉の桜田のりに聞いた。


「ん〜。そうねぇ。お姉ちゃん、そんなこと1度も考えたことなかったわぁ」


とても難しい問題ように、のりは考えた。
のりは極度の天然だった。
しかし、その性格だからこそ今までこの3体の人形と暮せたのだろう。
そこでのりが目を輝かせ、ポン、と手を叩いた。


「そうよぉ、ジュン君!テストをすればいいのよ!!ちょっと待ってて!お姉ちゃんすぐにテストを作ってくるからね!!!」

そう言いながらのりはあっという間に去って行ってしまった。


「はーい、みんな聞いてねぇ〜!今からテストをするよ〜!!」


のりが、文字の書いた白いプリントの束を手に抱えリビングに戻って来た。
どうやらそれは、手書きのテストだった。
次々にのりがプリントを渡していく。
雛苺、翠星石、真紅、そして何故か僕にもそれが渡された。


「何で僕も何だよっ!!」


思わずジュンは口を開いてしまった。


「良いじゃない。真紅ちゃん達の見本として一緒にやってあげて」

「ダルイなぁ・・・。もういいよ。しょがないからやるよ」


プリントを手に取りながら、机の椅子に座った。
3体の人形達も、ジュンを見本に椅子に座った。


「しゃーないです。翠星石も暇だからやってややるですぅ。こんなもんラクショーですぅ!」
「テスト♪テスト♪楽しみなの〜♪」


テストが何なのか分からないまま、雛苺はまたはしゃいだ。


「これから私は何をすれば良いの?」


ツインテールを揺らしながら、真紅はのりに説明を求めた。


「そうねぇ。簡単に言うと、その紙に書かれた問題を答えるの。最後に丸付けをして、自分の答えが合っているか確かめるのよ」

「そぅ。なら早く始めましょう」


のりが、そうね、と呟いた。


「じゃあ、今から始めるね。よぅい・・・・・スタート!!!」


のりの合図で、鉛筆を持った指が動きだした。


(えーっと、一問目は・・・・・・)


『2個の林檎があります。それに、もう3個の林檎を足すと何個の林檎になりますか?』


(・・・・・・簡単すぎる・・・・・)


ジュンはテスト用紙に答えを書こうと、すると、パリーン、という音がリビングに鳴り響いた。同時に、リビングの窓が割れ破片が飛んできた。


「うわぁぁぁぁ!!!!!!」


いきなり、窓が割れたのに驚き、ジュンは悲鳴を上げてしまった。
情けない、と言わんばかりに真紅が溜め息をついた。


「今度こそ、成功させるかしらー!!!」


そんな言葉と同時に茶色の鞄が割れた窓から入ってきたのだ。
この窓が割れたのは、おそらくこの鞄のせいであろう。
その鞄がパカッ、と開いたと思うと


「薔薇乙女第2ドール[金糸雀]参上かしら!」


と言い放った。

服装は、オレンジ色のハイネックのワンピースの上に黄色の燕尾風の上着を着ている。下半身はドロワーズ風の半ズボン。
髪と目は緑色。
髪型はお下げのロールヘアにハートの髪止めをしている。

そして、[金糸雀]は自分の人工精霊であるピチカートを呼び、それを手に取るようにするとピチカートが立派なバイオリンに変わった。


「攻撃のワルツ!!!!」


声と同時に、金糸雀はバイオリンを奏で始めた。
その音色はモノを破壊し、人や人形も痛めつけた。


「もっともっと!
 クレッシェンド!!!!!」


皆の顔に苦渋が浮かんだ。


「くそっ!何でいつもこなるんだよっ!!」


何も出来ない自分を悔やむようにジュンは呟いた。
ジュンは、耳を塞ぎながら目を閉じた。
しかし、急にバイオリンの音色は聞こえなくなった。
恐る恐る目を開くと、金糸雀のバイオリンの弦が1本切れているのをジュンは見た。
周りには、紅い薔薇の花弁が散らばっている。
おそらく、真紅が薔薇の花弁で弦を切ったのだろう、とジュンは予想した。


「なっ何でなのかしら・・・
 カナは薔薇乙女第一の頭脳派なのに・・・」


そして、金糸雀は床にペタリと座りこんんだ。
金糸雀の武器はバイオリン。
そのバイオリンが使えなくなってしまえばもう、どうする事にも出来ない。


「カッ、カナを煮るなり、焼くなり、食うなりするがいいかしら!!!」


床に大の字に寝転がりながら叫ぶ。
別に金糸雀なんか美味しくないのよ、と後ろで雛苺が呟く。


「よしよし、金糸雀ちゃんも、皆と一緒に遊びたかっただけなのよね」


怯えている金糸雀にとっては、のりの笑顔がまるで天使のように見えるのであろう。
金糸雀は黙ったまま、コクリ、と頷いた。


「ほんとに、しょーがない奴ですぅ。
 こんなチビが翠星石の姉なんて情けないです」

翠星石が鉛筆を持ったまま、腕を組み、その“姉”を見下すようにして言い放った。
薔薇乙女第2ドールの姉は、言い返す事が出来ず、うぅ・・・っと声をあげた。


「それじゃあ金糸雀ちゃんも含めて、またテストを再開しましょう!!!」


のりがテスト用紙を渡し、その一言でテストが再開された。




薔薇乙女第2ドールの金糸雀が新しく加わり、テストを再開した15分後・・・・・


「はいっ!テスト終了!!!」


のりがパンッ、手を叩いた。
静まっていたリビングに、音が響く。


「じゃあ、テストを集めるわよー。
 ジュン君も手伝ってくれる?」


笑顔で彼女は、ジュンにお願いした。
自分もこれに関わってしまった以上、ここから逃げることはできない。
明らかに嫌そうな顔で、ジュンは静かにテスト用紙を集め始めた。


          *

          *
        
          *


「じゃあ、テストを返すわよー!」


丸付けを済ましたテスト用紙を抱えながら、のりは皆に知らせた。
ぞろぞろとその皆が集まってくる。
雛苺はスキップをしながらこちらへと向かってくる。
よっぽどテストの結果が、楽しみなんであろう。


「テスト楽しいのー!早く、早く返してのりぃ〜」


のりにしがみ付きながら、タダをこねる。
その姿は幼児そのものだった。
のりはふふっ、と笑い雛苺にテストを返した。


「はい。100点満点よ。よく頑張ったわね、ヒナちゃん♪」

「わーい!!ヒナ頑張ったのぉ!
 これでヒナは一番賢いのよ!!!」


ジュンは開いた口が閉まらなかった。
何故あんな馬鹿な人形が!?
不思議でならなかった。
そして思わず、怒鳴った。


「なんでだよっ!!この問題の答えは[5個]だぞ!2個の林檎と3個の林檎を合わせれば、5個だ!!!
 なのにコイツの答えは[0個]になってるじゃないか!!!」

「だってこの林檎は全部ヒナが食べちゃうから[0個]で正解なのよ!」


すかさず反論をしてきた。
そんな屁理屈が通じるのか?と疑問に思ったが、呆れたので黙った。
再びのりがテスト用紙を返す。
それが自分の番になった。
どうやらジュンが最後のようだ。


「テストの点数を発表するわね〜。 
 ヒナちゃんが100点。  
 金糸雀ちゃんが100点。 
 水翠石ちゃんも100点。
 真紅ちゃんも100点。
 ジュンくんが0点よ」


―――!?

「なんでボクだけ0点なんだよ!
 こんな簡単な問題集、間違えるわけないだろ!!!」

「だってねぇ・・・。
 まずジュンクンは名前を書き忘れていたもの。
 他の問題だって、さっきの問題のようにジュンくんは間違っているわ」


そうだ。そうだったんだ。
のりは極度の天然だというコトを。
真面目にテストを受けるボクが間違っていたんだ。
深く溜め息をついた。


「まぁ、一応字は読めるんだな。
 何か疲れたし、もぅ寝るから」


踵を返し、2階へ上がろうとすると


「ジュン」


凜とした声で少年を呼び止めた。
少年は面倒くさかったが、仕方なく振り返った。


「何だよ、真紅」

「・・・・・。いえ、別に」

「じゃあ何で呼び止めたんだよ!!!」


紅のドレスを身にまとった、人形は小さく微笑むと踵を返し、リビングへ戻ってしまった。
何なんだよ、と小さく呟き階段を上がり自分のベッドに寝ころんだ。
でも、さっき真紅が自分に対して微笑んでくれたのを思い出すと、何だか嬉しくなった。










▼もうぐだぐだで本当にすみませんorz

今度はまともなのを書くように努力します。

長い時間かけてごめんなさーい!



紅薔薇

- 1 -


[*前] | [次#]
ページ:




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -