アレンの言い付けを破って髪を乾かさないとまま座布団に座ってテレビを見ていると、ふわりとシャンプーの香りがしてテレビが消された。アレンはわたしがバラエティー番組を見ていると決まってテレビを消しにやって来て、わたしに甘えたそぶりを見せたがるのだ。後ろから回された腕がわたしのお腹の辺りで結ばれて、彼はまたあごをわたしの肩にのせる。アレンの髪から落ちた雫が胸元まで伝った。

「…なんで乾かしてないんですか」
「アレンもまだじゃん」
「僕は今上がったばっかりでしょ」
「アレンやってよ」
「ばーか」


そう言って洗面所に行ってしまった彼がここにドライヤーを持って来てくれるのを知ってる。彼はドライヤーと一緒に、冷やしていたプリンとスプーンを2つずつ持って来てロウテーブルに置いた。わたしの正面で膝立ちをしてドライヤーをかけ始めてくれた。アレンが持って来たプリンを食べ始めると、ぷくっとほおを膨らませてわたしのことを見ていた。プリンを一口のせてスプーンを口元に運ぶと、ぱくんと彼の口の中に消えた。ぱくぱくと食べられている間にわたしの髪も乾ききって、ドライヤーのスイッチが切られた。

「わたしの分ほとんど無くなったんだけど」
「僕の髪も乾かしてくださいよ」
「えー」
「僕も食べさせてあげますから」

これじゃあ本当に馬鹿みたいだって、運ばれたプリンにぱくついて思った。アレンはとても楽しそうに笑っている。もうとっくに彼に骨抜きだった。綻ぶ顔を止められない。

さっきまで雫を垂らしていた髪もさらさらになり、ドライヤーを切った。ドライヤーを洗面所に戻したついでにリビングの電気を切る。明日も早いからもう寝よう。朝わたしが目を覚ましても彼が隣で眠っていると、安心したような、愛しい気持ちになる。時々ふらっと夜中にここを去ってしまったりするけれど、わたしに彼の行動を束縛する権利なんて無い。





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