目が覚めたらちゃんとベッドで布団を被っていた。パジャマを着ていたがたぶん自分で着替えたんだと思う。たぶん。
それよりも、部屋に彼の姿が無い。心臓がおかしくなったみたいに早く鳴って、1日中気が気じゃなかった。寂しくて声を掛けただけのはずの少年だ。一晩居てくれただけで充分で、続きが無いことは分かっていたつもりだった。それなのに、夜になっても彼のことを待ち続けてしまっていた。
彼が煎れてくれた紅茶を自分で煎れてみても美味しくなかった。なんとなく着けたテレビの内容なんか全く頭に入って来ない。テーブルにほお杖をついて冷めた紅茶を眺めていると、玄関の外の廊下に静かな靴音が響いた。コツコツと、わたしの家に近付いている気がする。じっと耳を澄ませているとその靴音はわたしの玄関の前を通り過ぎて聞こえなくなってしまった。


わたしは、ずっとこんなことを続けるつもりなんだろうか。仕事を休んでまで来るはずのない人を待ち続けて誰かに縋り続けるのか。それこそ馬鹿馬鹿しくて、情けない。
もう寝よう。明日は仕事に行かないと。眠気を感じないままとりあえず布団に入ろうとしたとき、不意にチャイムが鳴った。覗き窓から見えた人は間違いようもなくあの少年で、気付いたらドアを開けて彼に抱き着いていた。

「えっと…どうしたんですか?」
「…もう、来てくれないかと思った」
「僕方向音痴で、ちょっと迷っちゃって」

1回通り過ぎちゃったんですよって、やっぱりアレンだったのか。不安で死にそうだったと言うとぎゅっと抱き締められた。可愛い、って。久々に聞く甘い言葉にまた涙が出る。
それから、アレンの居る生活が始まったのだ。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -