麻痺してしまったように蝉の鳴き声だけが頭の中で無限ループ中。太陽がアスファルトを焼いている音まで聞こえてきそうな、夏。

「これ」

いつの間にか僕の遥か後ろをとぼとぼ歩いている彼女に、町内会か何かの掲示板を指差してみせた。暑い暑いと文句を言いながらも、小走りで掲示板まで来た彼女。カラフルに印刷された掲示物を瞥視して一言呟く。
なーんだ、だって。可愛くないなあ。

「行きたくないんですか?」
「ラビ今日はバイトだもん」

彼女の彼氏は僕ではなくラビだ。今日はたまたま、ラビは委員会だということで、友達である僕と一緒に下校しているだけ。
そしてラビは今日の晩もバイトが入っているらしい。なるほど、だからか。
ついさっきも、そのことについて愚痴を言っていたっけ。ラビはバイトで稼いだ給料をデートに丸々注ぎ込んでいるらしい。高校生には敷居が高すぎるようなレストランのディナーだとか、いいムードになった時のホテル代だとか、全部ラビ持ち。有り難いことじゃないのかと単純に思ったが、そうじゃないらしい。月に何回か高級なディナーを食べたり広いベッドでいちゃいちゃするよりも、放課後に公園のベンチで話をするとかそんなことでも、2人でもっとたくさんの時間を共にしたいと言っていた。まあたぶん、寂しいんだろうな。

そんな彼女には、言っちゃいけないのかな。少し悩んだけど、新しい浴衣買ったのになーと寂しそうに笑ったから、結局。

「一緒に行きます?」


花火の音が遠くで聞こえる。夜7時ぴったり、チャイムを押した。



もやもや
100805かける



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