「ね、ラビ。ひとくちちょうだい」
「ん、あーん」
「ありがと」

彼女と一緒に居るようになったのは多分半年ぐらい前から。ちゅーだってそれ以上のことだって順を追って至って真摯に行ってきたつもり。メシは欠かさず一緒に食べに来るし、今みたいなスキンシップも日常茶飯事になりつつある。
こんなに可愛らしい恋、久し振りかもしんない。否、恋だったり愛だったりではない。ただ男女間の依存関係。これが俺達のそれには1番正しい表し方だと思う。お互いがちょっと寂しくてちょっと人恋しくってって、それだけで始まりには充分な理由付けになる。どっちも人が好きででも人間が大嫌いで。でも独りじゃ生きていけないことを知ってる。タチが悪いのなんてお互い様まるで当たり前のように。必要な時に愛し合って要らない時には独りを気取ることが強いっていうことじゃないこと、知ってんのに。俺達って。人間って。不思議。


「ラビ。もう食べ終わったでしょ?行こ」
「そうさな」

細くて白い腕を俺のに絡ませるようにして俺の隣を歩き出す彼女の顔は嬉しそうだったり、ましてや幸せそうなんかじゃない。酷く怯えた様子で少し俯きながら、上目遣いのようにして周りの女を見遣る。眉根を寄せて、きゅっと口許を結ぶ姿を見て、彼女がぽつりと零した言葉を思い出した。

「独りは、こわいんだよ」

その時の俺は彼女が何を伝えたいのか報せているのかを真に理解しようとはせずにただ抱き締めて。哀しい色を映した双眼を隠した。それだけは軽々しくやってのける、それだけは。

他の女と擦れ違う度、俺を盗られてしまうんじゃないかと杞憂する彼女はこれが杞憂じゃないことを知っているからか。俺の腕に自分の腕を絡めて離さない。簡単に出来上がった虚構が呆気なく消えるものだと知っている。



彼女が死んだ。それを知ったのはついさっき。可笑しいことに1ヶ月前の彼女の死をついさっき、だ。普通は、誰かが俺に直接報せるだろうその事実を、彼女とよく居た食堂のテーブルで1人で耳に入れる俺には悲しさや涙なんてもの溢れてはこなかった。そこに無いから有ったのは、変な空虚感、たったのそれだけ。
いつだったか少し前、俺達の関係を依存関係と言った俺が居た。その時の俺は自分ともうここには無い彼女の存在をよく知ったような顔をする。例え、彼女がここから消えてしまったとしても。亡くなったものを無かったものにして、失くしたことに気付かない俺が居る、こうなると考えての依存。違った。
失くしたことに気付いて余情。やっと何かが溢れ出る。毎日あんな顔をしていたけど、俺の隣に居た彼女は幸せだったんだろうか。


いつだったか少し前、俺達の関係を依存関係と言った俺が居た。それは本当に間違いで、あれは相関関係。右と左で前と後ろ。どっちが欠けても終わりの関係。気付いて初めて流れる涙。俺は彼女を愛してた。



思葬
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