嫌いな先輩がいます。
先輩は可愛らしいというより綺麗という表現が似合う人で、つやつやした黒い髪の毛に白い肌の、どこかのお嬢さまみたいな容姿からは想像つかないくらいに元気でしっかりしていて、僕ら後輩のお姉さんみたいな人なんです。そんな先輩のどこが嫌いなのか。嫌いじゃありません。でも嫌いなんです。先輩と一緒に居るとここの辺りがきゅっと締め付けられて、なんとなく息が苦しくなって。どきどき、するんです。でもこのどきどきも、全速力で走った後のどきどきとは違うんです。後ろから大きな声を出された後のどきどきとも違う。…病気だと思うんです。しかも心臓の重いやつ。どうしよう、僕、みたらし食べれなくなるの嫌です。



「どうしたら良いんですか?ラビ」
「…」

馬鹿みたいにぽかんと開いていた口が、耳に入ってきた自分の名前で急いで閉じられた。腹ん中真っ黒で変な所ばっかり賢い男、印象は一変。だだの馬鹿が口許をきゅっと結んでこっちを見ていた。ユウちゃん以上。こいつ馬鹿。大体いつも俺を見てるあの蔑んだような濁った目はどこ行った!うるうるした目で見るな俺もお前もそっち系じゃない!
俺の1人脳内思考巡らせを知ってか知らずかアレンは、本当に不安で心配で堪らないんですっていう感じで俯いて下を見ていた。うーん、可愛い後輩のことだし真剣に考えてはいるんだけど何?こーゆう場合なんて言えばベストなの?お前あいつのこと好きなんじゃねーのとでも言えばいいんさ?いやいやそんなことしたらプライドの高いアレンのことだ。そんなこと有り得ません!とか言って余計頑なになるに違いない。うーんほんと、どうしよ。うんうん考えてたら本当にうんうん唸ってたんだろう。アレンがこっち見てた。あ、いつもの目。真剣に考えてんのに凄い悲しくなってきた。ユウちゃん居ないかなーユウちゃん来たら2人勝手に喧嘩するから俺この場から自然に消えれんのになー。視線をうろうろさまよわせてたら、あ。違うけど、居た。



「おーい」

「誰に手振ってるんですか」

手を振る友達なんて居ないじゃないですかって言うアレンの極上スマイルに負けないくらいに笑ってみせると、アレンは訝しげに目を細めた後、後ろ、俺が手を振った方を向いた。

「ラビっ!」

赤い顔して睨むアレンを無視して席を立った。その直後。隣に座らないで下さい!って、でかい声が聞こえた。アレンの奴、何やってんだ、とあの状況を造り出した当人である俺は不安になって振り返った。


「あなたと居ると心臓が凄くどきどきするんです!」

だから遠くに行って下さい!ってアレン。
白昼堂々とは正に。昼休みの食堂真ん中辺り。
愛の告白中。



繋がれ心
企画さいと百さまへ
090318かける


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