あったかいベッドの中で沈みかけていた意識が冷たい空気に引き上げられた。ゆっくり瞼を持ち上げると、クリーム色した天井。香ってくるのは、好きじゃない、甘い香水の匂い。寒いから体は起こさずに寝返りだけうって彼女の方を向くと、焦げ茶の瞳と視線が交わった。

ごめんなさい、起こしちゃった? ううん、へーき。 今から出て行くけど、部屋はお昼までとってあるからね。 …うん。

誰から貰ったのかは知らないけど、俺以外の誰かからの贈り物を首にかけて耳につけて指に嵌めて。じゃあね、また。そう言って振り返った彼女の瞼の色は今日は薄いブルー。青だから、今日は3番目の男のとこに行くのか、なんて、ぽーっとする頭で考えて、ベッドから出た。備え付けの冷蔵庫からペットボトルを取り出して中身を口に含む。きんと冷えた水は脳を覚醒させる。覚醒したからって、大したこと無い脳だけど。
テーブルの上には、いつも通りに紙キレ5枚。それをくしゃりと握ってポケットの財布に突っ込んで、部屋から出た。甘い匂いに酔いしれてしまいそう。酔余は嫌い。だって彼女のことばかり考えてしまう。俺以外の男のとこに行くこと、彼女は気にも留めていない。俺にも他に女は居るから。でも俺の中で彼女は1番。彼女の中で俺は5番目。

溢れかえる人混みの中で点滅したのは高い位置にある信号の赤。俺のとこに来る時の彼女の瞼は黒いラインに綺麗な橙。昨日は楽しかった。青になった信号を見て思い出すさっきの瞼。
今日は、楽しくない。
停まっていたタクシーに駆け込んだ。行き先は4番目の女のとこ。

4番目に訊いてみた。
お前の中で、俺って何番目?
馬鹿みたい。いや、馬鹿そのまんま。滑稽って、こういうことを言うんだろう。4番目はベッドに腰掛けてるからか上目遣いで俺を見ながら、笑わなかった。目だけで何かを伝えたがる。そういうの嫌い。むかつく。
言わなくても分かってるんでしょう?って。分からない。でも分かる。分かりたくない。お前の中で、俺は1番。嫌。俺はあの人だけの1番に、なりたいから。


「俺はお前大っ嫌い」

4番目は少しだけ目を見開く。余裕ぶった女の顔が崩れたから、ちょっとだけ楽しくなった。4番目は俺に、なんで、と、訊く。訊きたい?俺が返すと4番目もまた、直ぐに首を頷かせた。理由を言葉にするのは嫌いだけど、女に答えてやる。

「お前は俺の、1番じゃない」


高いマンションの一室を出て待たせてあったタクシーに乗り込んだ。行き先は2番目の女のとこ。1番目以外の女とバイバイする日。
また、が。次、が。いつくるのか分からない。それでも俺は、君が好き。愛してる。
それ以外、要らないから。



色違いの順番
090201かける


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -