俺がこいつに対して持っている感情といえばてっきり、庇護だとかそういう小さい妹に持つそれだとばかり思って長年こいつと一緒に居たけれど、突き止めてみれば慈しむという気持ちによく似ていた。それも他のあやふやな気持ちも全部ひっくるめると愛しいという気持ちに限りなく近しいものになると思うし、声にして口に出したら好きになると思う。それでも、こいつを好きなのかと訊かればはいと即答は出来ない。
ん、結局俺はこいつが好きなのか何なのか。なんかややこしい。こういう頭ん中かき回すみたいに頭回転させるのは得意分野じゃない。

「やーめた」
「何が?」
「何でもないさ」

ふーん、と適当に相槌を打つのにちらりと目を移す。
はむはむ、って効果音付きそう。うん。こういうのがツボなんだな。小動物みたいにあんまんにかぶりついてる。あと、身長差があるから俺と話す時に自然と上目遣いになるとことか。素直に可愛いとは思うんだけど、好き、なのか。でもこいつ俺の前で普通にアレンくん可愛いとか神田先輩かっこいいとか言ってるしな。
もし俺がこいつを好きだと断言出来るようになっても、俺はこいつの中の恋人というポジションには行けないんだろうし、こいつに好きだとは伝えられなくなる。それは俺がこいつの彼氏に本気でなりたいと思った時には致命的なのだろうけど、そうなることはたぶん無い。俺はこいつの彼氏に本気でなりたいと思わないし思えない。時々だけど、今みたいにあんまん食べながら一緒に帰ったり、真っ暗な夜に窓から部屋に入ってきたこいつとゲームしたり。絶対ぜんぶ、俺がこいつに好きの一言を伝えてしまったら崩れて無くなる。こいつは俺の隣からは消えてしまう。それはもう決まってる。こいつに好きだと言ってなお、こいつが俺の隣に居てくれるだなんて夢みたいな話だけれども。無い。そうなることが分かってて回避する権利が与えられてる。当たって砕けるだとか馬鹿なことするか、砕けた後はどうするんだ。砕けてからもこいつを見てる?死んでもしたくないし、砕けてからきっぱり未練を断ち切るだとか、そんな男らしいこと出来っこない。足掻いたって無駄なんだったら願わくば、こいつの彼氏はちょっとだけでも遠い未来に現れますように。



臆病ライン
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