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A freezing night

 暴動が起きていると通報があり、現場へと到着し護送車から一歩出てみれば凍えるような風が吹き抜けた。夜の外は思ってる以上に寒い。昼とは比べ物にならないくらい寒さが身に染みて鼻をすする。

 宜野座監視官の指示で暴動を鎮圧し、次の指示があるまで待機するもじっと立っているだけでは寒くて仕方ない。アウターのポケットに手を突っ込み、首をすぼめて小刻みに揺れながら寒さを紛らわせていれば、「トイレでも我慢してるのか」と言いながら狡噛さんが隣に寄って来た。

「違いますよ、あまりにも寒いから気を紛らわそうと体を動かしてたんです」
「真冬の夜に出動なんて勘弁して欲しいな」
「本当ですね」

 ああ、早く暖房の効いた部屋に帰って熱いくらいの湯船に浸かって暖かい布団にくるまりたい……。

「……あんた、鼻先赤くなってるぞ」
「寒いですからね」
「それに耳も」
「ひっ!」

 髪を耳にかけられた時に狡噛さんの手が耳に触れて、つい変な声が出てしまった。

「悪い、冷たかったか?」
「いや、そういうわけじゃないですけど……!」

 心臓には悪いです、と心の中で溢しながら髪をいじる。そもそもなぜ髪で隠れてる耳をわざわざ見たのか。全く、寒いっていうのに頬だけが異常に熱くなったせいで変に体が熱い。

「……こういう時は酒でも飲んで温まるしかないな。たまにはどうだ?」
「え、あ、まあ……狡噛さんが良ければ……」
「全然構わない」
「じゃあ……」

 「とっつぁんに頼んで熱燗でも用意しておいてもらうか」とデバイスをいじる狡噛さんを横目に、無意識にしている何気ない行動ひとつが、何よりも私を暖かくさせる効果を持っているという事は知る由もないだろうなんて思う。むしろ効果がありすぎて困るくらいだ。
 頬を掠める風が、今の私を冷ますにはちょうどいいと思うくらいに体は火照っていた。


2015/11/29〜2016/01/09
2015/11/28

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