4月1日の真実
今日は4月1日。俗に言うエイプリルフール――嘘をついてもいい日。そう、だから目の前のこれもきっと嘘だ。
初めての潜入捜査を終え久しぶりに本庁へと帰ってみれば、デスクの上にはありえない高さまで積み上がった紙の山が出来ていた。それを見てしまったら全力で現実逃避したくなるのは仕方のないことではなかろうか。
(これは夢、これは幻覚……!)
長期の潜入捜査明けで疲れてるんだ、うん。とりあえず寝よう。見なかったフリをして踵を返そうとした、その時。
「ぐへっ」
急に後ろからスーツの襟首を引っ張られて首が絞まる。こんな乱暴なことをする人は――
「どこに行こうとしてるんだい?」
「あれ〜降谷さんじゃないですか〜お久しぶりですね〜」
話を逸らすようにしてやんわりと逃げようとすれば「そうだね、久しぶりだね」と言いながら降谷さんはさっきよりも力を込めて自身の方へ引き寄せる。
「で、どこに行くのかな?」
「ちょっと仮眠室という楽園へ――」
「面白くない冗談はやめてくれないかな。言っておくけど君に休む暇なんかないよ」
「いやーっ!離してぇー!!」
私の腕をつかんでずるずるとデスクまで連れて行こうとする降谷さんの腕を、もう片方の手でがしりとつかんで自分の方へと力いっぱいに引き寄せようと試みる。が、降谷さんはびくともしない。もうっ、こういう時に男見せないでよ!
とにかく、帰って来ていきなりその仕打ちはさすがに酷すぎる!!
「これは何かの冗談ですよね!?だって今日エイプリルフールですし!そうですよね!?」
「嘘をついていい時間はもう過ぎてるよ。残念だったね。その前にエイプリルフール関係ないけど」
時計を見れば針は虚しくも12時1分を指していた。これが15時とかだったら諦めもつくのに、この何とも言えない時間が余計に絶望感を増幅させる……っていうかエイプリルフール関係ないんかい!それこそ鬼畜!もう何も言い返せないじゃんか!
「そんなぁ……」
「僕は嘘が嫌いなんだ。エイプリルフールだからって君をからかったりはしないよ」
どの口が言う!いつもからかってくるくせになんで今日に限って真面目!?その言葉が嘘だったら良かったのにとこれほどまでに思ったのは初めてだよ!
「さ、今日中に全部終わらせるんだよ」
脱力した体は降谷さんによってあっさりとデスク前まで運ばれて席に着かされる。頭をポンポンと叩いて「頑張ってね」なんて、端から見たら優しく応援してくれてるように見えるけど本当は違うってことわかってるからね!降谷さんの鬼!悪魔!
「終わらせてくれないと僕も帰れないんだから迅速にね」
「降谷さんの……降谷さんのバカーッ!!」
心からの悲痛な叫びが部屋中に反響した、そんな4月1日の昼下がり。
2016/04/01〜2016/04/03
2016/03/29
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