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In break time

「ここにいたのか。捜したぞ」

 休憩スペースで一人、コーヒーをすすって休んでいれば同僚である降谷がこちらへ向かって来た。

「何?呼び出し?」
「そうじゃない。お前に渡す物があって捜してたんだ。……これ、」

 目の前に立つ降谷を座ったまま見上げれば、目線の先にはブランド名が書かれた小さな袋。……差し入れ的な何か?いや、でもわざわざ捜してまですることか?なんて思いながら袋から降谷に視線を移す。

「差し入れ?」
「違う。今日が何の日かも覚えてないのか?」
「今日?……ホワイトデー?」
「そう。だから、」

 「ほら」と半ば押し付けられるようにして渡されたそれをつい受け取る形になるも、頭には疑問符しか浮かばない。そもそも私、降谷にバレンタインチョコなんてあげてないんだけど……。

「私、バレンタインの時何もあげてないよね?」
「覚えてないなら別にそれでもいい」
「その言い方だともしかして何かあげてた?」
「だから別に覚えてないならそれでいいって言ってるだろ」
「そう?ていうかこれ明らかに高そうなんだけど……」

 何をあげたのかも覚えてないのにこんな高級な物もらうのは何だか気が引ける。けれど降谷に「いいから黙って受け取れ」と怒ったような言い方で謎の圧力をかけられたからそれ以上は何も言わないでおく。
 未だに降谷の行動が謎のままだけど一応「ありがとう」とお礼だけは言っておいた。

「早速食べてもいい?」
「好きにしろ」
「じゃあ遠慮なく。……ところで降谷はもう仕事終わったの?」
「ああ」
「じゃあお茶でもしていかない?せっかく降谷からお菓子ももらったことだし、」

 「一緒に食べようよ」と言えば「お前は食べることしか頭にないのか」と呆れながらも、肯定の意味を表すかのようにその足は自販機に向かう。

 その背中を見ながら、素直じゃない降谷に思わずクスリと笑みがこぼれた。


2016/03/14〜2016/03/16
2016/03/14

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