Detective Main

おまけ

※降谷視点


 一つの布団で川の字で寝るなんて、後にも先にもないだろうと思っていた。でも今、それが紛れもない事実として目の前に存在している。初めて人生を共にしたいと思った彼女と、彼女との間に産まれた一人の息子。護りたいものが出来るというのはこれ以上ない幸せだ。

 真ん中ですやすやと眠る翔太の頬を撫でている反対側でなまえはお腹をポンポンと撫でている。毎日忙しいはずだろうにそういう顔は決して見せない。愛おしそうに翔太を見る表情はとても柔らかくて、見ているだけで疲れなんてものは消えてしまう。

「なんかさ、」
「ん?」
「最近翔太が零君に似てきてる気がするの」
「どの辺が?」
「わかっててわざと困らせるような事してくるところとか」

 「そういうところは似て欲しくないんだけどなぁ」と困ったように笑うなまえに「俺はいつでも優しいだろ」と言ってみれば、「えー、そうかなぁ?」とわざとらしく返される。確かに結婚する前はよくなまえをからかって楽しんでいたが、子供が産まれてからはそういう事はあまりしなくなった。
 翔太の頬を撫でていた手をなまえに移して指先を絡めるようにして手を握れば、なまえもそれに応えるように握り返してくる。

「そうだよ」
「でもまあ、確かにいいパパしてるもんね」
「……なぁ」
「うん?」
「最近、もう一人家族が増えたら嬉しいなーって思うんだけどなまえはどう思う?」
「もちろん増えたら嬉しいよ。そうしたら今度は女の子がいいなぁ」
「翔太が俺似なら、女の子が産まれたらなまえ似かな」

 きっと、真面目で何事にも一生懸命で芯の強い子になる。俺はなまえのそういうところが好きで、ずっと一緒にいたいと思うようになったんだから。

「でも私似だと翔太以上に零君にべったりになっちゃいそう……」
「何、ヤキモチ?なまえってそんなに俺の事好きだったの?」

 意地悪く言ってみれば「教えない」と笑顔ではぐらかされた。昔はこれだけでうろたえていたのに、いつの間にかかわすのが上手くなっているみたいだ。初々しさがなくなったのは残念だが、逆に言えばそれだけ長い時間一緒にいるという事でもある。
 それにその答えは聞かなくてもわかっている。今こうして家族として一緒にいるのがその証拠だ。

「ま、子供がなまえそっちのけでも俺だけはずっとなまえの事を好きでいるから、何も心配する事はないよ」

 手を取って薬指に小さく口付ければ、照れくさそうにしながらも顔を綻ばせるなまえに、これから歩む彼女との未来に思いを馳せながら今ある幸せを噛みしめた。


2016/02/27

back
- ナノ -